ホワイトプレゼント

クリスマスっぽい恋愛小説 クリスマス短期連載・やや甘め

2008年12月24日(Wed)▲ページの先頭へ
ホワイト・プレゼント16
 千住は「ごめん」と俺に言い地面に座り込む。それを見て夜月は銃を放し、聖夜の首にしがみつき、声を出し泣く。
 俺はポケットから白い・・・雪のようなペンダントを千住の手に握らせていう。
 「これは・・・俺のお前達への選別だよ。これを夜月に渡して『絶対に帰るから、もう少し待ってくれ』って声を掛けてやれよ。」
 千住は頷くとそれを手にして夜月の首に掛ける。
 彼女はぎゅっと右手で掴み、左手を後ろに回し離れないように彼の胸に縋り付く。
 それを見て、俺は携帯で親友の刑事に電話をする。
 
 アイツと、夜月は迎えに来た窪田刑事にパトカーに乗せられる。
 その後ろ姿を見つめ不思議と涙が溢れた。
        
 まるで悪夢のように・・・俺はどす黒い淀んだ心に支配されていた。残忍な殺意があって親友を殺そうとしていた。ゆがんだ愛と欲望を心に抱えていて、何時までも夜月を手に入れようとしていた。
 醜い感情が横たわっていた。そしてそれは拒否したい事であったけど、現実だった。
 そう言う自分の悪魔の感情が許せなかった。
 何より、一番今好きな人の気持ちを傷付けた事が許せなく・・・弱い自分の気持ちが許せず、絶望で胸が苦しく涙が出た。
 
 そんな俺を彼女は抱いて泣きやむのを待ってくれた。
 これでは・・・どちらが年上か本当に分からない。
 
 彼女に俺はキスをした。
 そして自分の素直な気持ちを言った。
 
 「俺は・・・聖夜の事が好きだ。俺はお前が必要なんだ。
 お前が居ないと俺は、きっと暗い欲望に流されてしまう
 本当に好きな人が居ないと止められないんだ。」
 
 「大丈夫だよ。綾瀬は・・・真面目だから。
 あの時止めなくても、綾瀬は銃を撃たなかった。
 私の事だって、私の身体や将来の事まで心配して守ってくれる。だから大丈夫だよ。」
 聖夜は俺にそう答える。


2008年12月23日(Tue)▲ページの先頭へ
ホワイト・プレゼント15
 「いいのかよお前、彼女を犯罪者にしていいのかよ。」
 俺は奴の背中に向かって叫ぶ。
 「お前が逃げたら、彼女はお前の逃走を手助けしたと言う事で犯罪者になるんだぞ。
 お前は自分の為に彼女を不幸にしても平気なのかよ。
 彼女を幸せにするんじゃないのかよ。」
 
 俺達の思いはあの時一緒だった。
 聖夜がその身を俺に捧げてもいいと言ったように、中学校時代俺達は夜月の為に死ぬ決意が出来ていた。
 
 『俺は夜月の事が好きだ。夜月の為だったら、アイツの父親を殺しても構わない。』
 『千住、犯罪行為だよ。そんな事をしたらお前が不幸になるよ。』
 『俺はお前と同じように夜月の事を愛している。その為に俺の命なんかどうにでもなってもいい。お前は違うのか。』
 『俺だって夜月の事は好きだよ。アイツを手に入れる為なら、身も心も捨ててもいいさ。
ただ、それでも夜月は自分の父親が死んだら救われたと思うよりも、きっと悲しむ。
 俺はアイツの望む幸せを叶えたい・・・だから、お前も彼女を不幸にするな。』
 
 端から見れば馬鹿な事かもしれない・・・子供の浅はかな思いかもしれない。
 ただ、アイツは捕まる危険も知りながら夜月に会いに来た。彼女が待つ彼女が誕生日の・・・クリスマスの夜に。
 だから、彼奴自身もあの時の思いをきっと持っている。
 不思議と、そんな事を確信していた。だから叫ぶ。
 
 振り向いたアイツは、まるで中学校時代と変わらない表情で俺を見る。少しやせはしたけど、気持だけはあのままだった。
 俺はアイツに更に言う。ずっと思っていた・・・昔好きだった。夜月を幸せにして欲しいそう言う思いを込めて・・・・アイツに叫ぶ。
 「お前が、逃げていたら夜月はずっと待たないといけないんだよ。
 だから、夜月の為に捕まれよ。
 刑を服すれば、ずっとずっと夜月の側に居てあげられるんだ。
 そうすれば、彼女は幸せになれるんだ。」
 
 俺達の間にあった淀んだ物はいつのまにか、澄み切った冬の夜空のように消えていた。


2008年12月22日(Mon)▲ページの先頭へ
ホワイト・プレゼント14
 夜月の前でアイツを殺せば夜月への思いも殺せると思った。
 夜月の未練を終わらせる事が出来ると思った。
 
 (この距離でこの状態で、照準を合わせた今、殺せる。)
 確かな確信が、俺の心を限りなく冷たい気持にさせる。
 氷のような、本当の心を示すように・・・・
 
 ここに来る前、銃を撃ったのはその為だった。
 彼奴を殺す事だけを考えてひたすら、的をアイツだと思って打ち抜いていた。
 捕まえる為ではない。職務以外で刑事が銃を持つ事は認められていない。
 殺す為だけにわざわざ俺は銃を持って来た。
 
 アイツの血に染まった瞬間答えが出る。
 本当に今も、夜月が好きなのか。
 聖夜の思いに答える事が出来るのか。答える資格があるのだろうか。
 
 俺にはどす黒い淀んだ心があって・・・残忍な殺意があって・・・ゆがんだ愛と欲望を心に本当はきっと抱えている。
 
 彼奴を殺す事でしか答えが出ない。
 引き金に指をかける・・・・・・
 不意に、聖夜の顔が心を過ぎる。聖夜の包み込むような掌の感触が銃を持つ手に蘇る。
 殺すはずなのに引き金が引けなかった。
 
 「ダメっ」
 動かない俺の手を聖夜が掴み取る。悪い夢から覚めたようにぼんやりと俺は愛しい彼女の顔を不思議な気持で見つめていた。
 手から銃が滑り落ちる。
 横でガラス戸が割れる音がした。アイツは逃げ出した。
 俺は銃を拾わず、アイツの姿を追う。
 手を延ばせば捕まえる所まで近付いた瞬間、夜月の声が夜の静寂の街に響く。
 「綾瀬。もう止めて、千住を追わないで。
 そうしないと、聖夜を殺すよ。」
 俺達は同時に振り返る。そこには、夜月が左手で聖夜の手を掴み、右手で俺の銃を突き付けている。
 俺は手を上げ、お手上げという仕草をする。千住はそれを見て逃げようとする。


2008年12月20日(Sat)▲ページの先頭へ
ホワイト・プレゼント13
 後ろの聖夜が夜月に言う。
 「お姉ちゃん。私今夜綾瀬と一緒にいるだから心配しなんで。
 綾瀬好きだと言ってくれたから・・・。」
 「聖夜っ。」
 突然そんな事を言われ戸惑い俺は声を出す。聖夜は俺の・・・あるいは夜月に未練があると思い・・・敢えてそう言ったのだろうか。
 「・・・・そう。よかったわね。」
 聖夜に対してなのか、俺に対してなのか分からず夜月は嬉しそうに返事をする。
 俺は慌てて逃げるように部屋を後にする。なんだか少し不機嫌さと、違和感を感じながら・・・
 玄関の前で、小さな声で俺の手を掴むと聖夜は謝る。
 「ごめん嘘を付いて。」
 「どうして・・・・」
 俺が効くと、後ろを振り向き更に声を低くしながら告げる。
 「アイツ・・・多分お姉ちゃんの部屋にいる。
 お姉ちゃんの所にあるアイツの写真立ててあった・・・・。アイツとお姉ちゃん油断させる為に私・・・」
 
 銃を掴み、足音を立てず部屋に近付き、ドアを蹴り開ける。
 
 (コノ思イガ本当カドウカ。許サレルノカ許サレナイノカ決着ヲ付ケタカッタ。)
 
 夜月は顔を首に埋められ、その肩を強く抱かれていた。アイツの手が夜月の長い髪にからみつき、その曲線が乱れている。
 「千住っ。」
 俺は大声でアイツの名前を叫ぶ。
 アイツは棒立ちになり、こちらを向く。その瞬間ためらわず銃口をアイツの頭に定める。
 
 アイツを殺す。
 犯人である事を理由にアイツを殺す。
 
 その思いで2年間待っていた。それだけを考え、クリスマス夜月を張っていた。
 
 懐かしの再会。何年経っても、友としての感情は失った訳ではない。
 だからこそ、ずっとずっと暗い感情を抱いていた。


2008年12月18日(Thu)▲ページの先頭へ
ホワイト・プレゼント12
「ありがとう綾瀬。始めて私の心に触れた時いつも怖い顔をするか、目をそらすから・・・ずっとずっと不安だった。
 全部綾瀬にあげたかった。全部綾瀬にあげないと、私自身が不安だった。
 貴方にとって私はまだ子供だったから、貴方の気持ちを全部理解出来ないから、そうでないと怖かった。
 うそを言ってでも、私を傷付けられても抱かれれば、貴方の物にして貰えれば安心出来るような気がした。
 大人として、綾瀬に相手をして貰えれば、自分が同じ所に居られるような気がした。
 今日でないとダメな気がして仕方なかった。綾瀬が私の手が届かない遠くへ行ってしまいそうだから。」
 そういって聖夜はぎゅっと俺の手を掴む。
 
 彼女はいつも本気だった。だから好きだった。
 
 だから自分自身が怖かった。
 
 不意に、聖夜の家の方から物音がする。
 俺は、銃を取り出すと弾を確認しドアを開け家の玄関を開き中にはいる。
 慌てて聖夜も俺の後を付いていく。
 
 (ダカラ決着ヲツケタカッタ。)
 
 両手で銃を持ち構える。耳を澄ましドアを一気に開く
 
 (愛シテイル。ダカラ決着ヲ付ケタカッタ。)
 
 夜月がベットに腰掛けながらこちらを見つめる。俺はそれを心の片隅で意識しながら部屋の辺りを見回す。特に変わった所はない。
 「変わった事はないか。」
 「・・・・えっ。」
 俺の短い問いに、彼女は普通に驚く。
 目が合う。黒い感情が俺を責める。
 『貴様ノ愛ハ偽物ダ。昔本当ニ彼女ヲ愛シテイルナラ今更何故変ワルノダ』
 咄嗟に俺は目をそらす。ごまかすかのように「そうか。」と答えると逃げるように部屋を後にしようとする。


2008年12月16日(Tue)▲ページの先頭へ
ホワイト・プレゼント11
 (今も・・・そうか・・・)
 捜査に使いながら、彼女に面倒を掛けながら、彼女の心を知っていながら・・・俺は、彼女に好きとも、嫌いとも結局言っていない・・・そういう卑怯者だった。
 
 「セックスしたくて『愛している』って言う訳ではないだろう。
 俺を犯罪者にするつもりかよ。もっと、自分を大切にしろよ。
 そんな事を言わなくても大丈夫だから。」
 そう言いながら、自分の中の偽善に気付いている所為で彼女を気遣っている台詞も何処か表面だけのようで、言っていて白々しい気がする。
 激しい目で聖夜はそれ以上言わせず、俺の手を・・・まるで心が逃げないようにつかみ顔を近づけ、小さいけどはっきりした口調で俺に囁く。
 「まだ高校生だからって遠慮しなんでいいの。
 男の人は好きでなくても女の人を抱けるでしょ。
 綾瀬が思う程、子供じゃないから。」
 飛び込むように再び唇を近づける。次の瞬間、俺と聖夜に痛みが走る。
 歯が当たったのだ。
 「・・・・・?!」
 聖夜は口を押さえ泣きそうな・・・恥ずかしそうな顔で外を向き、うずくまる。
 俺の方も口を押さえながら、彼女の姿を見て、その時うかつにも彼女が嘘を付いている事を始めて気付いた。
 (抱かれた事がある・・・って精一杯の背伸びだったんだろうな。キスこれだけ怯えてぎこちない女の子がそれ以上なんて出来る筈無いな・・・)
 最初のキスも殆ど触れるか触れないか位の感じでキスとは言えない感じである。きっときっと、誘惑とかもあったんだろうがずっとずっと守ってきたんだろう・・・そう言うの意味無いなんて言われるかもしれないけど。彼女は必死に・・・
 男は壊れるのが嫌いで嘘を付いたり、取り繕ったりして、自分をガードする。
 だけど女の子は普段弱い筈のに、本気で好きになると自分の全てを捧げる勇気があって凄いと思う。そんなまっすぐで偽りのない心に凄く惹かれてしまう。
 「大丈夫だよ。そういう欲望よりも強くお前が好きだから。
 本当に大切だから、お前にキスして、身体に触れて・・・そうすると歯止めが効かなくなるなるんだ。本気で好きだから、お前の人生を壊したくないし、お前を幸せにする為自分の人生を壊したくないんだ。」
 これは本心だった。再び会ってから・・・いやっその前も告白された時も、その前のあの事件の時も、それより前も好きだった。
 本当に妹のように可愛くて、だけど年下なのに気持がしっかりしていて、優しいけど強く俺の事を思ってくれていて、俺の事をいつも本当に真剣に考えてくれて本気でいつも答えてくれて好きだった。だから・・・


2008年12月14日(Sun)▲ページの先頭へ
ホワイト・プレゼント10
 更に激しく・・・自分に歯止めが聞かなくなって・・・あるいは夜月が迷い苦しむのを見て余計押さえきれずに激しく彼女に叫ぶ。
 「このままだと、アイツおかしくなるよ。お前だってアイツと一緒にきっとおかしくなってしまうよ。アイツは・・・きっときっともう二年前のアイツなんかじゃない。だから」
 「・・・・やめてもう。お姉ちゃんを責めないで。」
 恥ずかしそうに押し黙っていた聖夜が、我慢出来なくなり叫ぶ。
 「私がいけないの。綾瀬のお姉ちゃんの気持ち知っていたのに、私がお姉さんに言わせたの。
 だから、私が悪いから・・・もう言わないで。お姉ちゃんを苦しめないで。」
 そう言うと、彼女は顔をぐちゃぐちゃにして鼻をずるずる言わせながら苦しそうに息をしながら泣く。
 夜月は俺達に目を背けたまま呟く。
 「私、ずっと小さい時から一番綾瀬の事好きだった。
 だけど、私は綾瀬の事を選べない・・・・」
 「好きならいいじゃないか、どうして・・・アイツに助けられたからか。」
 俺は、彼女の言葉を信じられず・・・聖夜への罪悪感もあって消えそうな声で尋ねる。
 彼女は強い意志で俺の目を見つめた。
 「それは関係ないの。本当に
 好きだけど、貴方にとって私は必要ないから。
 アイツには・・・私が必要だから・・・私がアイツを捨てたら、貴方の言う通り壊れてしまう。私にとっても・・・アイツが・・・・」
 「わかんないよっ、全然お前の言っている意味が。」
 俺達の間を冷たい風が通り抜ける。迷う心だけが空しく冬の風景の中で時間に置き去りになっていた。
 
 あの後、俺達・・・夜月の事は勿論、聖夜とも会わなかった。
 あの時、好きと言っていたら・・・嫌いとでもはっきり言っていたら、聖夜を苦しめなかっただろうと、ずっとずっと思っていた。
 きっとその時の俺は卑怯者だった。どちらとも彼女に返事を与えなかったから。
 聖夜が不良仲間と付き合いだしたのはそれからまもなくだった。生殺しにした事、怒り憤り・・・それらを背負わされた彼女がそう言う世界に救いを求めたのも・・・そう言うのに真実を求めたのも、俺自身がそれを与えなかったからだろう。


2008年12月12日(Fri)▲ページの先頭へ
ホワイト・プレゼント9
 それは、俺にとっても聖夜にとっても辛い記憶だった。
 俺が今の聖夜と同じ頃、突然夜月に呼び出された。
 その頃俺は聖夜とはたまに他のダチと一緒に遊園地や美術館に行ったりしていたが、夜月とはあの事件の以降距離をお互い何となく空けるようにしていた。
 だから、不思議な感じがして正直いい予感はしなかった。
 (俺は若かったから・・・夜月達が付き合っている事に対する心の傷がまだ生々しかったし、その頃にはもうアイツに対する悪い噂が聞こえ始めていたから、自分の感情が押さえきれる自信がなかった。)
 待ち合わせの場所には、夜月と中学生の聖夜が居た。そして、夜月の口から聖夜は俺の事がずっとずっと・・・俺の事が好きだったと告白された。
 
 その時の聖夜は彼女が保育園に行く前から夜月と一緒に面倒を見て来たし、五才年下という人もあり、妹としてしか見れなかった。
 女としては・・・恋人に突然言われてそうなれる・・・そんな事は考えた事もなかった・・・聖夜も同じようにお兄さんぐらいとしか見てなかったと思うので戸惑った。
 好きだけど、恋人としての好きではなかったし、気兼ねなく遊んでいるのが楽しかったので率直にそう言えば、そんなに後ろめたい気持にはならなかっただろう。
 それに対して俺は返事をしなかった。必死だった聖夜の気持ちを無視して、俺はその時夜月に黒い感情をぶつけていた。
  「そんな人の心配より、お前はどうなんだよ。」
 「えっ」
 「アイツの事だよ。アイツあの事件でみんなから責められて学校7めさせられて、変わっちまった。ヤクザの関係の仕事について、その手先みたいな事をして。
 あんな奴と付き合っていて、お前こそどうなんだよ。」
 口調は冷静に、感情の刃を潜ましたまま俺は、聖夜の事を無視して話し掛ける。
 「関係ないでしょ。今そんな事。」
 顔を伏せて、敢えて諭すように夜月は呟く。目を合わせる事を怯えるように。
 「関係あるだろ。お前は俺の気持ちを知っているはずだ。
 あの後、俺はお前に『好き』だと自分の意志を言った。それなのに、聖夜にこんな事言わせるなんて、押しつけて逃げたいのかよ。
 アイツの事がそんなにいいのかよ。俺じゃどうしてダメなんだよ。」
 更に激しく・・・自分に歯止めが聞かなくなって・・・あるいは夜月が迷い苦しむのを見て余計押さえきれずに激しく彼女に叫ぶ。
 「このままだと、アイツおかしくなるよ。お前だってアイツと一緒にきっとおかしくなってしまうよ。アイツは・・・きっときっともう二年前のアイツなんかじゃない。だから」


2008年12月10日(Wed)▲ページの先頭へ
ホワイト・プレゼント8
 暗くて気が付かなかったが、そう言われれば違う気がする・・・と言ったら怒られるだろうか。確かに黒い髪の方が個人的には好きだが別に俺自身は正直あんまり気にしなかった。今の彼女は綺麗だけど、昔の茶髪の彼女も別に同じぐらい好きなのである。
 (それなのに、どうこう言われても困るんだよなぁ男は。)
 「似合っている」そう答えれば簡単だとは分かっている。だけど彼女の気持の為に俺は奴らとは違う答えを返す。
 「でも、変えるぐらいだから聖夜は茶髪の方が好きでしょ。黒もいいけど今までのままでも茶髪の聖夜も可愛いからそっちも好きだよ。」
 「・・・・ありがとう。」
 一瞬凄く嬉しそうに笑顔をしたが、聖夜はうつむいてしまう。素直な気持ちを言うと何処か人とずれてしまう。きっと素直に肯定して欲しかったのだろうか。
 (でも、それが本心だから自分の心ない事を言うのは嫌だし・・・)
 俺達そのまま黙り静寂が支配する。
 
 「あのさぁ、綾瀬。」
 重たい空気の中、耐えきれないように意を決したように聖夜は真剣な声で話し始める。
 「あのさぁ、綾瀬。無理しなんでいいんだよ。」
 「・・・・」
 「綾瀬はお姉ちゃんの事本当は好きでしょ。だから、アイツが綾瀬と同じように好きで、綾瀬と同じようにお姉ちゃんに・・・お姉ちゃんの誕生日にきっと・・・。会いに来る。そう思ってイブの日なのに私に会いに来たんでしょ。」
 「・・・・」
 俺は返事をしない。図星である。
 アイツの行動を考える時、アイツの立場になって自分ならどうするかと言う事ほ・・・自分の気持ちを考えるのが正しいと思っていた。確信があるから事件から二年も経っても、ここにいるのである。
 「お姉ちゃんの事にこだわって・・・今もお姉ちゃんの為にあの男を待っている。
 でも、無理しなくてもいいよ。私は、綾瀬が私の事好きでなくても・・・綾瀬の為ならお姉ちゃんの様子教えてあげる。」
 不意に彼女の顔が俺の顔に近付く。唇が触れる。
 そこが痛い程熱く感じる・・・そんな甘くはない口付け。
 「抱きたいなら、抱いてもいい。綾瀬知っているでしょ。ずっと前に不良だから、その時男の人知っている・・・だから、好きにしてもいいよ。
 綾瀬なら、心も体も全部あげる。
 昔、告白した時も言った。好きだった・・・ずっと・・・ずっと。」
 
 


2008年12月08日(Mon)▲ページの先頭へ
ホワイト・プレゼント7
 「今年お前受験だろ、勉強はかどっているか。」
 「・・・全然うちの学校綾瀬みたいにまじめな所でないから、この時期になっても教師と生徒がとらぶっていて、全然ダメよ。
 何とか塾の勉強で振り落とされそうなの食い止めている感じ。
 正直学校なんか行きたくないな。」
 「・・・・二年前まで金髪にして不良していたのに、結構根性あるなぁ。」
 「ひどいっ。過去なんて誰も変えようがないじゃん。
 これでも、綾瀬の為に変わったんだよ。恥ずかしくない人間になろうって。
 それに大学行きたいし仕方ないじゃん。」
 「・・・・まぁっ、俺も表面だけ綺麗にしてグレては居なかったけど、中身は不良だったからでかい事言えないか。
 平均点取る勉強だけして、それ以上はダチと遊び回るのが楽しくて学校なんか同じように出席日数稼ぐ為だけに行っていたし・・・」
 
 俺から彼女に退屈させないように話し掛けながら、心の中は何処か醒めていた。彼女の事は夜月の妹ととして昔から知っている・・・だから嫌いな事はない。
 確かに一時家を出て悪い奴らと行動していたけど、それは本当の原因が俺にある訳だから彼女は悪くないと思っている。
 顔も好みで目が綺麗で整った顔をして綺麗で、何より中身が俺は気に入っている。
 頭の効きがいいから不愉快にさせる事なんかないし、一つ一つの言葉がこちらの気持ちが分かっているかのように優しく思いやる言葉で答えるので話していて凄く魅力を感じる女の子である。
 好きだと言って構わない。だけど、
 今の高校生の彼女と、昔の高校時代の夜月が似ている(姉妹だから当たり前なのだが)。
 その事が俺の黒い感情を、この思いが偽善である事を断罪しているようで、それ以上の感情は持たないように歯止めを掛けていた。
それがいいことでない事は・・・聖夜に対し可哀想なことをしていることは頭では分かっていたが、ある意味俺にとって都合が良かった。
 彼女に対し冷静に行動が取れるのである。
 
 「髪の色、黒に戻したんだけど、どう。」
 聖夜はいつのまにか黙っていた、俺に突然そんな事を聞く。
 「結構好評なんだよ。まじめに見えるって、物理の先生凄く褒めていた。おばさんも、お姉ちゃんの高校時代みたいでいいって言うし、クラスの男の子も凄く大人しくっていいって言って。」


2008年12月06日(Sat)▲ページの先頭へ
ホワイト・プレゼント6
 (アイツは絶対に会いに来る。彼女が好きなら絶対。)
 
 「コン・コン・コン」
 ドアの硝子に軽い音がする。聖夜がこちらを覗き込んでいる。
 横のパワーウインドのボタンを押す。勢い良く、ドアロックが上がる。
 「・・・・さむっ。」
 そう言いながら聖夜は助手席に当然のような顔をして座る。厚手のコートを抱きしめるように震えている胸元がセーラー服なのが、嫌がおうにも彼女が年下である事、子供である事を思い知らせられる。
 余り見ていると単なるスケベに思われるので目をそらした。そして柴又は「恋人」とか言っていたが、実際そう思えない・・・思ってはいけないと言う事を思い知る。
 「くしゅん」
 不意に彼女はくしゃみをする。確かに俺は先程の張り込みで厚着をしていてこれぐらいでも平気なのだが、慌ててヒーターに手をやる。
 そうすると、聖夜の方が俺に気を遣って慌てる。
 「ごめん。寒くないよ全然っ、ただ・・・」
 「ただ・・・」
 「火薬の臭いがして・・・鼻がなんかかゆくって。」
 こちらを見て遠慮がちに言う。
 彼女の勘の良さに感心とほんの少しとの脅えを感じながら、先程練習で撃っていた銃の感触を思い出す。
 
 銃が、好きか嫌いかと言えば正直余り好きではない。
 でも上手か下手かと言われれば、どちらかと言えば上手い方である。
 それに理性では嫌っていても、銃を撃っている瞬間はそんな事を感じず、
 引き金を引いた感触、的が壊れ弾ける姿・・・そう言うのが快感でないとは言えない。
 
 この日俺は普段より多くの弾を撃った。
 一年間ずっとこの日を待っていたから。彼奴が俺の前に姿を現すのを待っていたから。
 (この事件を終わらせる為に)
 緊張していると言えば緊張している・・・何処か苛立っていると言えば苛立っている。
 その事だけをずっと待っていた。その事だけの為に俺は・・・
 
 聖夜の恋心を利用している。
 
 その為に夜月の妹に近付き、二年間彼女に監視させた
 黒い感情の俺が居る。


2008年12月04日(Thu)▲ページの先頭へ
ホワイト・プレゼント5
聖夜に連れられ、夜月の部屋に入る。あの時・・・小中学校の時と余り変わらない様子の部屋にすっかり大人の女になった夜月が座っていた。
 「Happy−Birthday。」
 俺は彼女に一言言う。そうクリスマスイブが彼女の誕生日である。
 人形のような彼女の唇が緩む。感情ではなく、単なる儀礼で。
 「ありがとう。」
 その一言を言う。それ以上不思議と会話にならない。無邪気に昔話をする・・・そんな関係ではなくなっていた・・・あれからの歳月が・・・
 互いに刑事と犯人の恋人・・・それ以上でもそれ以下にもならない関係しか無かった。
 「・・・・あれから、彼奴から連絡は来ているか。」
 俺は極めて事務的に問い掛ける。それでも俺には、昔の感情が・・・それでもまだ生々しい傷跡であるかのように、思い出す。
 「連絡はないよ。もうあの人は来ないわ。私の誕生日なんか忘れたみたいだから。
 去年も、その前のイブも来なかった。ずっと、ずっとあのままなのよ。」
 何処か投げやりに、何処か寂しく夜月は答える。淡々と俺に感情を殺して答えているものの、アイツの事を振り切れていない・・・・そんなような気がした。
 不意にテレビの上に目をやる。高校最後の頃そこに置いてある写真立てにアイツと夜月の幸せそうなツーショット写真が置いてあった。流石に見ると辛くなるのか、あるいは世間体からだろうか、その写真は伏せてあるけど・・・捨てられないのだろう。
 「そっか。わるい事言ったなぁ。
 ・・・・もし、アイツが来たり連絡をくれたなら俺に伝えてくれ。」
 そう言うと、いたたまれず彼女の部屋から俺は出ていく。

 
 『東京地域は北からの湿った空気で、朝晩冷え込み場所によっては雪が降るでしょう。』
 ラジオが誰かに向かってそんな事を呟いている。俺は車の中で椅子を倒しそのくらい天井を見つめ彼女の事を考える。
 昔の女にあった余韻をかみしめていると言うよりも、ここに来たのは彼女に会う為ではなく、ここで彼奴を待つ為に他ならないのである。

 科学的な根拠を言えと言えばそんな物はない。
 ただ、アイツはクリスマスイブの日に・・・彼女の誕生日に絶対ここに来る。
 そんな感じがするから、張り込んでいる。


2008年12月02日(Tue)▲ページの先頭へ
ホワイト・プレゼント4
 「ごめん下さい。」
 俺は、呼び鈴を鳴らす。目が大きく小柄な女の子がこちらを見て微笑む。
 「・・・・綾瀬。待っていたよ私に会いに来たの。嬉しいよ。」
 彼女は本当の俺が来た意図を知りながら、おどけるようにそんな事を言う。
 俺は鼻の頭を掻く。咄嗟に彼女の言葉に反応出来ないで居る。
 「・・・・まぁ、兎に角中に入って。お姉ちゃんに会いに来たのでしょう。」
 そう言うと部屋の中に案内する。何度かここに来た事がある。
 狭い家である。それさえだって正直この二人でどうにかするのが大変であったのである。
 床に大きい傷跡がある。昨年のイブもここを通り同じ事を思い出していた。
 嫌な記憶だった。
 俺と聖夜の姉の夜月とアイツは小学校からの同級生だった。家が近いと言う事で男と女・・・と言う事は考えず俺達は結構遊んだり、話したり、ゲームをしたり・・・今思えば微妙な関係だったけど・・・微妙な関係だからこそバランスが取れて、それなりに楽しかった。
 夜月の母親は早くに死に、父親はそのショックから酒に溺れていた。
 そして俺達が中学に入る頃には完全にアル中になって、そしてあの出来事が起こった。
 
 『お父さん。止めて。』
 『人をお前までも、バカにしやがって。殺してやる。殺してやる。』
 突然、俺達が3人遊んでいる部屋に彼女の父親は入ると、酒臭い息を吐きながら夜月の身体に馬乗りになり、殴りかかってきた。
 俺は、咄嗟に止めようとしたが彼女の父親の力に振り回され、タンスに身体を打ち付けられ動けなかった。
 それを止めたのはアイツだった。アイツは手にしたラジカセでアイツの父親の頭と背中を打ち付け、彼女を救い出した。
 父親は幸い死ななかった。中学生の力などそんな物だろう。家庭内の事情と言う事もあり事件にはならなかった。あの後夜月の父親は施設に入れられそこで死んだ。
 経済的破綻をしなかったのは、夜月の母親の家がそれなりの資産家であったからである。
 (あの事件で、俺は大切な物を失った。)
 その直後夜月とアイツは恋人の関係になった。俺はあの時救えなかった後ろめたさから、段々と二人から距離を置くようになっていた。


2008年11月29日(Sat)▲ページの先頭へ
ホワイト・プレゼント3
 車に乗り込もうとすると、柴又は向こうにいたケーキ屋のアルバイトの女の子達を呼び寄せ、俺の前に並ばせる。
 「先輩・・・・これから彼女達と合コンしませんか。彼女達先輩の事ホストみたいでカッコイイって・・・・。」
 俺は不覚にも一瞬固まる。確かに張り込みをしていると派手でホストの兄ちゃんかと呼ばれるが・・・そんな事より彼女が居るのに、なんてまめな奴なんだろうか柴又は。
 容姿の善し悪しよりもこういう奴が、一番世の中でもてるのであろう。
 「・・・・悪いが。今日じゃないとダメな所があるんだ。」
 俺が面倒でそれだけ答えると、あの野郎大声で余計な事を言う。
 「聖夜ちゃんですか。
 先輩イブになると必ず、あそこに行くから。」
 「やだぁっ聖夜ちゃんってこの人の彼女なの。」
 アルバイトの女の子が歓声を上げる。
 「そうっ、先輩の彼女はなんと高校生。」
 更に柴又は余計な事を言う。
 「うそっ、警察なのに手を出したら。東京都の条例違反じゃん。」
 「鬼畜よねぇ。獣よねぇ。」
 ・・・・やかましい。誰が手を出したと言うんだ。
 大体にして、確かにアイツの言う事は場所はあっているが正解ではない。彼女に会いに行く訳ではないのである。
 
 2年前のクリスマスの日高校の同級生が心不全で死んだ。
 死体の側にプレゼントがあった。中身は白い粉が入っていた。
 麻薬だった。
 それによる中毒により心肺機能が停止したのである。
 
 送った奴は・・・これも俺の同級生で元野球部の奴だった。もともとコイツはろくな奴でなく、その女と付き合っていて二人ともシャブの常習者だった。彼女の死ぬ瞬間まで一緒にいたらしい。
 捕まった時、どうやら量を間違えたという。たくさん服用すればたくさん快楽を得られると思った・・・そんなうざけた事を言っていた。
 まぁ、その時はこれで事件が終わった筈だった。これで事件が追われば俺も正直辛くはなかった。
 だが奴から出た真実はそれより重たい物だった。
 彼奴らは俺が警察に就職した以前よりすでに麻薬を使っていた事。更に、その麻薬の胴元だったのが、同じクラスの奴で比較的親しい奴だったのである。


2008年11月28日(Fri)▲ページの先頭へ
ホワイト・プレゼント2
 「先輩。今回の事志願したのは。麻薬の事だから・・・違いますか。先輩いつも麻薬の事になると、ムキになるから・・・」
 余計な事を言いだしたので、俺は車のキーとケーキの空き箱を押しつけ。そこから離れる。
 「ちょっと一件行く所がある。不審そうな奴を見逃すなよ。」
 「先輩何処へ行くんですか。大体情報屋の言っていたサンタのカッコしている売屋ってどんな奴を捕まえればいいんですか。」
 大声でコイツは聞いてくる。あのなぁっ、犯人にも聞こえるだろう。
 「だから説明しただろう。ゆうっのプログのmyメニューに書いてあるのが偽物のサンタだから捕まえればいい。
 だからアクセスしてみろっ」
 後輩は意外な趣味があるなぁと思い、携帯でアクセスする。
 「・・・・ちょっと先輩。これって単なるネタじゃないですか。
 もうっ、5分以内に戻ってこなかったら泣きますよ。」

俺が一カ所アクセサリーの店から帰ってくると、後輩の柴又はまじめに怖い目つきでサンタの姿を追っている。
 「おいっ不審な奴は居たか。」
 「綾瀬さん。クソ長いですねっ。正直誰が怪しいか何か分かりませんよ。アバウトな話じゃないけどサンタが多すぎて。」
 それぞれに柴又は指さしていく。その中のカップルと話し込んでいるサンタの手の中が光ったのを俺は見逃さなかった。
 「バカ。バイヤーのアイツ・・・は(どうせお前では捕まえられないだろうから)俺が行く。お前はあの女を捕まえコインロッカーの場所を吐かせろ。」
 「はぁ。」
 「アイツコインロッカーの鍵を渡していた。そこにブツ入れて現金と取り引きして居るんだろっ」
 そう言うと、アイツを置いて俺はそのサンタを追いかけ、路地に引き上げる所を後ろからニードロップを食らわせる。
 
 似合わないパトカーが止まり、サンタクロースが乗せられる。同じように彼から鍵を受け取った女も警官に囲まれ連行されていく。
 顔をさすりながら、さも得意げに柴又は俺に声を掛ける。
 「やりましたよ。すげぇ量の麻薬。この後彼奴ら・・・高校生なんだけど・・・仲間集めてこれでパーティーするつもりだったらしいですよ。
 親に育ててもらっている身で何を考えているのか。ろくなもんじゃねえなぁ。」
 なんか親父臭い事を言っているようだが、俺は返事をしない。別にそんな事はどうでも良かった。捕まえた事実さえ手に入れればそれ以外は興味はなかった。


2008年11月27日(Thu)▲ページの先頭へ
ホワイト・プレゼント1
繁華街に、ジングルベルのメロディーが流れる。
 彼の目の前を、沢山の人々が通り過ぎる。そこにカップルらしい男女が多いのは今日がクリスマスイブと言う事だからだろうか。
 直ぐそばに、そんな華やかな雰囲気があるのに何処か壁があって遠い世界に感じるのは、相手が居ない所為なのか。それとも仕事の所為なのか。
 「先輩、買ってきました。差し入れ。」
 今時珍しい刈り上げ頭の男が、派手な紙バコに入った物を俺に差し出す。
 嫌な予感はしたが、開けてみるとショートケーキが入っている。
 「メリークリスマス。」
 その男は俺にそんな言葉を掛ける。俺は正直目眩を思える。
 「あのなぁ。食い物買って来いって言ったが、普通こんな物買ってこないぞ。」
 「いいじゃないですか。クリスマスなんだしっ。」
 「まさか手作りじゃないだろうな。俺はホモなんかじゃないぞ。」
 「僕だって違いますよ。文句言うなら食わなければいいでしょ。」
 そんな事を言っても、こっちはずっと立っていてお腹が減っている。カロリーが高そうだが、生まれてこの方太る事に心配した事はない。正直甘い物は好きなので、構わずそれを食べる。
 「・・・・所で先輩。こんな所で麻薬の売人が、シャブ売って居るんですか。そいつだってこんな日は、彼女といい思い出を作って居るんじゃないですか。
 僕だって、何を好き好んで先輩とイブを過ごさなくてはいけないんですか。せっかくの彼女のデートの約束断らないといけないなんて・・・全くたまんないよ。」
 大げさに、アイツはため息を付く。確かにコイツには大人しめの彼女が居るから。可哀想と言えば可哀想だという気持がない訳ではない。
 「まぁ、嘆くな若者。お前もデートの後は彼女と二人で・・・という口だろう。居るんだよ、世の中には薬の力を使わないと事に及べないバカも居るんだよ。
 それに文句を言うなら、ボスに言えばいいだろう。」
 「柳沢警部補ですか・・・。あの人『困るよ、困るよ』って言って、人の話聞かないからダメですよ。大体先輩がいけないんです。自ら志願してこんなのを引き受けるから。
 まぁ、警官だから仕方ないと言えば仕方ないんでしょうが。」
 更に文句を言う。確かに俺達の上司は数々の事件を解決した名刑事であるが人の話を聞かない。俺だって好き好んでここに居る訳ではない。あいにくデートの約束はないが、こっちだってやりたい事はたくさんあるのである。



   


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