「猫の散歩道」
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2008年07月16日(Wed)▲ページの先頭へ
猫の散歩道−名探偵及川詩織の完全犯罪−
自称名探偵及川詩織
趣味「猫と遊ぶこと」というか現実世界で探偵で食えるほど世の中は甘くない。 ☆☆☆ そういう探偵の所へ珍しく人間がやってくる。 後輩の女の子だ 彼女は暇な探偵にあることを聞いてくる。 「完全犯罪ってあり得ますか?」 「完全犯罪?」 完全犯罪は推理小説の王道だ。興味はあるが、大体そう言うネタは出きっている。 小説なら勝手だが、現実ではあり得ない その見解をふまえて後輩は事情を説明する 「実は、大牟田さんって居るでしょ」 「ああ、還暦の筋肉質のおじさん」 年を食っているにもかかわらずぼるどあっぷしていて自分よりはよっぽど力が強そうな奴である。ポーズを取っているときはもちろんであるが普段もニコニコしていて精神的にも健康そのものの輩である。 そう言えばこいつが、オッサンは若いキャバ嬢と結婚していたと話していたっけ 「その女が若い男と出来ちゃって邪魔になったらしくて、大牟田さんに毒を盛ったらしいの。それもバレないように少量の毒をゆっくり継続させて服用させることで・・・」 (ああ、そういうの時代劇にあったなぁ。) そう思ったが詩織は面白いので黙って聞く。 「先輩が前に言っていたと思うけれど 現在解剖の出来る医師って県に一人ぐらいしかいなくってよほどのことがない限り解剖が行われないから。生前中に事件にならない限りなかなか犯罪にはならないというのなら、今回のも完全犯罪になっちゃうでしょ 大牟田さんいい人だったのに邪魔になったから殺すなんて許せない。」 彼女はそう憤った感じでつぶやく。 憤る気持ちは分かるし、確かに今各所の予算や人員が減らされている今犯罪の検挙率は悪くなっている。 しかしだからといって完全犯罪なんて骨の折れることはかなり面倒なことなのである。 でも「ばれない」とか甘くと言うよりは世間をなめているような楽観的な犯罪者が今は多いと思う。 「そのての犯罪は完全犯罪なんて言ったら笑っちゃうよ。 そう言う死体は消失しても犯罪って分かっちゃうものだよ 全く近頃の若者は『水滸伝』ぐらい読んでいないのかなぁ」 ☆☆☆ 先輩はそう言うが遺体は遺族の意志で解剖もなく、通夜も終わると翌日多くの人の見守る中火葬される。 ボルドアップされた体も、犯罪の痕跡も一緒に高温で焼かれて灰になっていく 「あっ」 本来高温で焼かれた骨は限りなく真っ白になる ところが焼き出た骨は長い間の毒に浸食され、真っ黒くすぐに壊れそうなほどもろかった。 異様なその骨の姿に明らかな異常と犯罪を感じ参列者はざわめく 「なるほど」 犯罪者は悪事はばれることを軽く考えて行う人間と、絶対にばれないと思うから犯罪を起こす人たちの二通りがあるという。 後者のような輩が世の中を甘く見るから犯罪は減らないのである。
2008年07月12日(Sat)▲ページの先頭へ
猫の小道「命日」上編
その日は普段と特に変わらない一日の筈だった。
君は僕に餌をあげると、何気ない顔でいつものようにご主人を送り出した。 「さて」 そう言うと彼女は服を着替え始めた。 結婚してから主人の趣味なのか黒とか、白とかそう言う落ち着いた色の服を着ていた彼女だが今日に限っては桃色の可愛い服を着た。 そしてピンクの口紅を付けながらいつもの彼女とは違うように、少し前に流行った鼻歌を口ずさみ、そして家から僕を追い出すと、白いマーチで出て行った。 ☆☆☆ 真っ青な空に浮かぶ雲のように、白いマーチは高台へと上っていった。 そして、真っ青な湖の見える墓地でその車は止まった。 「ふう。」 ため息を一つ付いて意を決して高台の墓地の更に上の方にあるお墓へ上っていく。あまりそう言うところを歩くには向かないハイヒールで一年に一度しかはかないような靴で、一年に一度しかはかない服で上っていくのは意外に難儀なことだった。 「さて、」 そう言うと、ポケットからたばこを取り出し口に挟み、息を吸うようにしながら火を付けた。 そしてそれを線香の代わりにお墓に立てて、手を合わせる。 「絢ちゃん。来たの。」 そんな声が背中の方からかかる。振り向くと性別は違うと言え、あの人が立っているような……そんな雰囲気を持つそんな女性が立っていた。 「こんばんわ。」 「絢ちゃん。来てくれてありがとう。 でも貴方はもう結婚したのだから、無理にここに着ない方が良いわよ。 旦那さんの木津さんにも悪いし。」 拒絶すると言うよりは、諭すように女性はほほえむ。その笑顔の口元に去年なかったしわがあり、目元もどこか元気なく、この一年でめっきり年を取った感じがした。 「こういうことを言うのも変だけど。すごく何も見えなくなるぐらい息子のことを好きだったから分かるけれど、でもいつまでも死んだ人間を思い続けることは、旦那さんが居るとか居ないとかにかかわらず良くないわよ。 貴方は欠かさず命日に来てくれるのはうれしいけれど、もう彼の友人達も親戚も貴方のように毎年来る人間なんか居ないのだし。」 そしてもう一度言う 「だから、死んだ人の事はもう忘れてしまいなさい。こんな所を貴方の旦那さんが見たらいい気もしないだろうしね。貴方にとって木津さんが一番大切だから。」 「私にとっては死んだあの人よりも、木津が一番大事です。」 黙っていた彼女は、きっぱりとその女性に言った。 「私は、私を愛してくれる木津を愛しています。364日間は彼のことだけを考えて生きています。 でも一年に一日だけは死んだあの人のことを思ってはいけませんか。」 「だって、あの人は君でない好きな人のために死んだのだから。一番好きな人じゃないのだから……」 女性はそう言いかけて、止める。その現実に一番辛いのはあれだけ彼のことを愛した絢自身であり、かなり痛い言葉であるはずだから。 でも彼女は笑顔で、痛みも悲しみもない様子だった。むしろそう言う物を超えてしまったかのような穏やかな悟りきった表情であった。 「それは知っています。もしかしたら私が今1年に1日だけ思っていても、向こうは全く好きでないかもしれないことも。」 「絢ちゃん」 「おばさま。人の愛情って本当にすべてを好きになる言うことがあるのでしょうか。私はそうであるとは思わない。木津だって100%私を愛することなんかあり得ないと思います。人は誰しも欠点とか嫌な部分はあるのだから。」 その時もう一度絢は確認する。死んだあの人に愛情とそれとあるいは同じぐらい嫉妬と憎しみがあったことを。 「だからこそ、誰かを愛すると言うことはお互いに努力したり、嫌な部分を受け入れたり我慢したり、優しくしあったりしないと成立しない。」 所詮は恋人であったり、夫婦であったりしても、自分ではないから。 「だから木津のために木津だけをほとんど考えて私は生きて居る。 私が、一年に一日だけあの人を思うのも結局は1%にも満たない気持ちにすぎないんです。」 そう言うと彼女は彼の墓前で手を合わせる。同時に木津に対しても心の中で手を合わせる。 (だから、貴方は自分のことを忘れろと言うけれど、一年に一度だけは貴方のことを思うことを許してください。) (私という人間の何分一かを作ったのは紛れもなくあの人だから、一年に一度だけはその部分を捨てられないから、許してください。)
2008年07月10日(Thu)▲ページの先頭へ
猫の散歩道−歌姫−
「おいで真琴」
そう彼女は僕を呼び頭をなでる。 真琴という名は彼女が言うにはとある小説に出てくる香港の「歌姫」の名前らしい。 他ではゴンゾーとか、けむんぱすなど呼ばれていることを考えれば、性別は間違っているが、それ程悪くない名前なのだろう。 彼女は、僕という猫に餌をくれる人の一人だ。 出会いはとある地方都市の駅で路上ライブをやっている時、客が居ないときに僕を見つけチーズをくれたのが出会いだ。 その彼女は不機嫌そうだった。彼氏が居て仲良くやっているようでずっとこの所機嫌が良かったのだが、最近「彼は大人でずっと私よりもしっかりしている」とか「やさしくしてくれる」とかほめてばかり居るのに、その割にだんだん暗くなってきている。 というか暗くなっていくと言うよりも、些細なことで感情的になったり、落ち着かなかったり・・・何かに怯えているような感じがした。 携帯がなると決まって最近は怖い顔になる 「幸之助っ。怒っていないよ。私がわがままなのは分かっている。でも、ちょっと」 何事か話していたが彼女は力もなくうつろな感じで返事をするばかりであった。 そして電話を切る。 「分かっているのよ。このままじゃ駄目だって言うことぐらい。音楽でご飯を食べていく事が大変なのはコウちゃんの方が良く分かっていることも。」 そういいながら、彼女は今時珍しいカセットデッキを再生させる。 アコーステックの音楽が静かな部屋の中で流れていく。 心地よい音楽の中、彼女は僕の体を抱く。 「この音楽はコウちゃんと最初に会ったときに弾いてくれた音楽。 すごくギターが上手でとても心地よくていつまでも聞きたいって思った。」 この音楽を聴いてから余計音楽にのめり込んだ。 だからこそ「せっかくの仕事のチャンスだし、結婚が近いからもっと二人の時間を増やしてほしい」と言われた時、裏切られた気がした。 「でもコウちゃんの方が年上だし、絶対正しいんだよね。」 −だって、私よりもずっと上手なコウちゃんでさえプロになれなかったのだから。諦めなければならなかったのだから。 同じ道を歩いてきたから、なにより世界で一番私のことが好きだからこそ、敢えて心配して大事にしているから、そう言ったのに。 誰より私が貴方の優しさを知っていなければいけないから、貴方の言葉を大切にしなければならないのに。 「なのにどうして涙が落ちてくるの。」 僕は彼女の腕の中からぴょんと飛び出すと、部屋の片隅においてあるギターのそばで丸くなる。 「そうか、真琴は私のギターの音を聞くと気持ちよさそうに眠るんだよね。」 何かを吹っ切ったように一つ息を吐き捨てて、彼女は弾く。 僕は猫だから、音楽のことは分からない。 まして猫だから彼女を勇気づけることも、彼のように猫の僕の人生よりも長い彼女の人生を思い考えてあげることも助けることも出来はしない。 でも許されるのなら彼女のギターを聞いていたかった。 こんな風にずっと彼女のギターを聞いて眠っていたかったんだ。 FIN 連載「猫の散歩道」 とある地方都市の猫の見つめた風景 あるいは猫の居る風景 ショートストーリーまたは駄文 掲載中 一話完結型なので、それぞれ独立した話です。 |
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カレンダ
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