真三國志曹操編−55−



2008年11月16日(Sun)
真三國志曹操編−55−
 「えっ、曹騰が」
 登用された事はうれしいが、それを命じた人間の正体に驚く。出世自体はありがたいが、その意図を理解できない。
 (贈賄は本当で懐柔するつもりなのだろうか。)
 そんな事を考えたが、更なる調査は李固は許さないで釘を刺す。
 「いいかこれ以上余計な事を調べると私たちが許さないぞ。私も曹騰の口添えで登用されたのだから。」
 そう言った後思い出したように更に釘を刺す。
 「言っておくが俺が登用されたのも、お前が登用されたのも、賄賂を送った事ではないぞ。曹騰殿は純粋に有能な者だけを用いるのだから。
 彼が居るからこそ門閥に関係なく我々も重く用いられる事を忘れるなよ」
 (本当かよ)
 そんな思いを持ちながら、皇帝の呼び出しがあり謁見をする。
 皇帝の横には曹騰がおり、険しい表情の皇帝と違う曹騰はこちらを見てニコニコする。先日言い争いをしたのにも関わらず、皇帝は曹騰に目で促されると、蜀郡からはるばる都に上がった労を始めてねぎらうと、先程李固から示された役職を任命する。
 「……曹騰がそなたは有能だと強い推挙があったからこそそなたを用いるのだから、我が為に精一杯尽くせよ。」
 と一言申し伝えて彼を退席させる。
 (また曹騰かよ。)
 とは思ったが、先日の皇帝の怒りからすれば彼の言葉がなければ殺されていたかもしれない。と案内された時の硬い表情を思い寒気が背中を走る。
 (彼のためにこんな目に遭っているのだが、思っている以上に曹騰は人望があるようだ。これ以上彼を追いつめようとしても誰も味方してくれるわけがない。悔しい事であるがお礼を言った方が良いだろう。)
 そう思い、卑屈に思いながらも曹騰に対して感謝の言葉を口にする。
 それに対して曹騰は素っ気なかった。
 「私は合理的にしか考えられないので、そなたが有能な男だからこそ用いるのであって、私に恩を感じる必要は全くない。ただ皇帝は先日の貴方の言われた事は不快に思っているので、頑張って出世して皇帝の信頼を人以上に頑張って手に入れてください。」
 と言って、恩を着せるつもりもなく、自分を訴えた者に対する者とは思えないほど素っ気ない対応である。
 彼にとって見れば少し拍子抜けしたし、やっぱり彼の疑惑を考えるとその言葉もにわかに信じられずに、恩に対しても着るつもりはなかった。

 やがて彼自身が、曹騰に感謝するとともに彼の言葉の本当の意味を知る事件がのちのち起こるのであるが、その時は恐れを知らぬ者の怖さかその程度の認識である。
 

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