真三國志曹操編−27−



2008年10月04日(Sat)
真三國志曹操編−27−
 「殺されても良い」
 そう口で彼らは言うが曹騰も皇太子も少しも心では屈していないのである。
 (殺せる物なら殺してみろ)
 とまるで開き直っているようにも見える。
 「生意気な奴らだ。」
 そう叫びながら、ふと自分が皇太子の立場だったらどうなのか。とふと思いを巡らせる。彼自身、彼の人格を否定し実権を渡そうとしないケ太后に対して、皇太子のような強い後ろ盾がないのに、いまだに甘んじようとせず、必死につっぱっているのである。
 (そういえば、そんな俺の為に曹騰の父、曹萌は何度も俺のために頭を下げてくれたような気がする。)
 他の人が、取りなしてもケ太后は「私はあの人格破綻者に政治を任せられない」と受け入れなかったのだが、曹萌がのほほんっと優しく諭すと、仕方なく「怒る気が失せた」と、根負けして丸く収まったのである。
 (あの親にしてこの子ありというか)
 曹騰はその父親と今同じ立場にいて同じように皇太子を必死に守ろうとしている。
 それは邪魔であることは確かなのだが、だからといって彼が憎いわけではない。むしろ彼の仕事ぶりには好感を持っている。今回の事もいちゃもんを付けて困らせたいという出来心だけであり、実際過失のない彼をおとしめる事は今は後ろめたさも感じていたのである。

 彼自身は人に好感を持つことはなかったが、それでも曹萌に対しては強い感謝を持っている。その彼を殺す事は彼の恩を考えたら出来なかった。
 しかも今の曹騰の姿は重なって見える。
 「どうしましょうか」
 張逵と言う若い宦官が喜々として聞いてくる。彼は有能な曹騰をねたむ宦官である。
 皇帝が彼を殺すように言い出す事を楽しみにしていた。
 だが皇帝はそんな彼の気持ちなど興味がない様子で、考えた後
 「どうもしない。いつもどおり明日の朝令の準備を手配するように伝えろ」
 そう彼の望まない返事をする。
 「それでは過失のあるのに許さなければ他の宦官達に示しが付かないでしょう。」
 せっかくの好機を逃した事に不服なのか張逵は思わず余計な事を皇帝に言う。
 「過失か……」
 そう言って親指の爪をかじり考えた後
 「いや……、曹騰には過失はない。私も勿論過失はあるはずはない。何事もなかったのだ。」
 そうつぶやいた。それはふと、
 (そう言えば曹騰にも、父曹萌にも使えていて何一つもその仕事に過失がない事を思い出したのである)
 せっかくあの好感を持つ曹萌から折角親子で過失がなかったという記録が折角続いているのにそれを終わらせるのは
 (曹萌の恩に対して失礼である。)
 と思ったし彼に対してその名誉を自分の手でつなげさせてやろうと気前よく思ったのである。

 そんな事もあったりして、曹騰の信頼は過失が全くない事もあり日々厚くなっっていき、それに伴い皇帝と皇太子の中に少しずつお互いを憎しみあう時間は減っていった。穏やかな時間が流れていったのである。

……しかしそれはあまりにも微妙な力関係の間に成り立っており、やがてそれは時間があっさりと壊してしまうのである。
 「ケ太后死去」
 その日がすぐに訪れ、穏やかな日々はあっさり終わる。

  
 
 
 
 


   


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カレンダ
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