真三國志曹操編−26−



2008年10月02日(Thu)
真三國志曹操編−26−
 「だったら、曹騰に過失があったとしたらどうするというのか。」
 皇太子の問いかけに皇帝は意地悪く逆に問いかける。
 すると彼は剣を皇帝の前に差しだし頭を下げて言う。
 「万が一、曹騰に過失があれば彼の責ではなく、彼を遣わせた私の責です。彼の代わりに私の首を刎ねていただきたいと存じます。」
 「私に切られても、そなたは文句を言わないというのか。」
 明らかに疑うように、そしてその言葉を信じないように吐き捨てると彼を部屋に置き去りにしようとする。
 だがそれを皇太子の心の叫びが押しとどめる。
 「殺されても仕方ありません。いいえ皇帝に我が心が通じないのならたった一人の肉親にただ尽くしたいと思っていても、あなた様にその思いが伝えられないほど私が無力であるのなら、父上の為に自分が何も出来ないのであれば、生きていて何の意味があるというのでしょうか。
 言葉や思いが伝わらないのなら、私の命で父である貴方に子としての思いを何とか届けたいのです。」
 顔を上げた皇太子と皇帝と目が合う。
 その時始めて自分に対して敵意に似た感情を我が子が向けている事に気が付く。
 『どうして父上は、我が子に対して愛情を差し向けてはくれないのか』
 普通の父親が持つ愛情を子供に対してどうして持たないのか。
 そこには愛されるべき情を受けることが出来ず、愛に飢えている等身大の少年の強い不満と疑問ととまどいがあったのである。
 「父親といえども、私は皇帝でありそなたの主である。曹騰の事は私が決めるべきであり、そなたはいかに息子とはいえ臣下の身で口出しをするのは僭越である。下がれ。」
 そう言いはなったが、思わず少年にすぎない皇太子の視線と背け、そくささと背を向けて部屋を出る。
 (皇太子を廃立させる好機だったのではないか。)
 一瞬そんな思いが皇帝には確かに存在していた。ただそんな事を言える余裕がないほど、彼はたじろぎ、同時に後ろめたさを感じて、一刻も早く立ち去ろうとしている自分を感じずには居られなかったのである。
 押されるほどの強い皇太子の感情がどこなく皇帝には恐怖であり、同時に好みが内側から焼かれるほどの熱い物を感じた。
 忘れようとするように目を閉じると、まぶたにまだ皇太子の姿が焼き付けられるように残っている気がした。
 
 
 

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