真三國志曹操編−14−



2008年09月11日(Thu)
真三國志曹操編−14−
だがその言葉を拒絶するように皇太子は強く叫ぶ。
 「いや父上は人格的におかしいのだ。ケ太后の助けがなければあの狂人が皇帝になれば、実の子供であっても殺される。父上には人としての肉親の情や倫理などないのだ。」
 そう人格を疑うようなことを激しい言葉をぶちまけ顔を伏せる。
 そこまで深い不信に掛ける言葉を曹騰は失い黙るしかなかった。その前で皇太子は方をふるわせてしばらく沈黙があたりを支配する。
 やがて意を決したように皇太子は顔を上げる。その瞳には赤く潤み泣いたようにほほは濡れている。
 (ああこの人は)
 激しく自分を嫌う父親に対して反感を言葉にするものの、彼は何故実の父親に憎しみをもたれ、嫌悪されなければならないのか、幼い所為もあるのであろう理解できずとまどい不安になっているのだ。
 同時に父親に対して子供として愛されることを望み、それなのに果たされない寂しさを持ち合わせているのかもしれない。
 (そう言うところでは私はこの人に近いのかもしれない。自分の父親が宦官であることに反感を持っていながら、その一方で多くの人間から信頼される父を、何事も落ち度なくこなす父親が逆らいがたい存在であるという事も。)
 その一方で人の心に少年ながら父譲りの機敏さを持つ曹騰は皇太子が皇帝に嫌われている理由を察知していた。
 (ケ太后は人格に問題がある皇帝を全く信用していない。彼に一切の権力を与えずに自らが政治を牛耳っている。彼女の実家で彼女を助けて実権を握るケ騭とケ鳳父子も有能で過失もない人間で、名声が高い。
 ケ太后が自分の母親であれば皇帝も素直に従えるのであろうが、自分の母親とは違う父和帝の妻であり、その英邁な和帝の血を継ぐ皇帝に対してケ太后が単に妻になっただけで皇帝の血を引く者ではない。
 そんな状況が若く気ばかりが高い皇帝に我慢できるはずがない。
 だからこそ、ケ太后が決めた皇太子を否定することで自らの存在を誇示したいと言うことであるだろうし、皇后の閻氏の一族の力を借りてケ一族に対抗したい気持ちがあり、彼らの協力を得るために閻皇后の子供を皇太子にする必要があるのだ。)
 思うに彼ら親子の確執の原因はケ太后にあるのである。ところがその原因を作った本人も、その影響を一番受ける皇帝もそのことを理解していない。
 「祖父和帝は横暴を極めた外戚(皇后の一族。有力者が多く皇帝に血縁関係を結ぶ一方、その武力と人脈を利用し、宦官を忠臣とする皇帝集権の政治が始まるまで実質的な政治を支配した)竇氏誅滅を計画した際、和帝が密謀の相談役に選んだのは宦官の鄭衆だった。彼は宦官の役職上近くにいて話していても全く不審ではなく、全く密謀を行うに都合がよかったのだが、それ以上に鄭衆自身が選ばれたのは皇帝に対する忠誠心の厚くまた頭脳明晰で行動力のある人物だったと言う。」
 彼はその後竇憲を宮廷内におびき出し、大将軍の印綬を取り上げ実権を剥奪追い込んだ。
 和帝は外戚から政治の実権を奪うと、鄭衆を信任し続け権力を安定させた一方、取り戻すことに成功した。それにより積極的に領土を拡大し稀代の名将班超を用いて西域の50余国が後漢に従い。最大の領土を手にしたのである。
 

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