真三國志「関羽・酔っぱらいに閉口する」−1−



2008年06月07日(Sat)
真三國志「関羽・酔っぱらいに閉口する」−1−
 背の高い眼光鋭き男が、不釣り合いなほどのどかな農道を歩いていく。
髭は伸び放題のび、髪の毛も大きく伸びている。顔はかなり日に焼けたせいか、あるいはアレルギー体質なのか、酒を飲んだように真っ赤にしている。
 だが衣服はしっかりとした者をまとい、その辺が唯一人間らしいと言えば人間らしいが、その他はあまりまともとは言えない。異相の男と言えた。
 本人はあまりそうとは思っていないが、体格が人並みはずれて大きい所為かとても偉そうに見える男である。
 「これはこれは。」
 と頭を下げる農夫もたびたび居る。そんな彼らは腰を低くして挨拶はするが、恋にすぐに目を離して、なるべく関わりたくない様子である。
 「本当にあんな訳のわからない男に、子供の勉強を教えてもらって大丈夫か。」
 少し不満そうに彼が去った後、ある農夫は自分の妻に小言を漏らす。
 「でも、領主様によると何でもこの辺一体で一番、孔子・老子・孫子とか何やら学問に詳しいらしいよ。
 また弓の名手でもあり、力持ちで青竜刀を振り回すらしいの。
 我が子に出世をしてもらうには文武に優れてもらわないとやっぱりね。」
 妻はそう答えるが、決まってこの農夫は怪訝そうな顔をする。
 「本当にそうなら、なんでこんな田舎で寺子屋の先生をして居るんだ。」

 その質問には彼・・・・関羽自身の方が聞きたいところが本当であろう。
 だからこそ、農夫達が怪訝な顔をすることも不本意ではあるが理解が出来る。
 (俺だって、こんなところでガキ相手に学校の先生などしたくねぇつうの。)
 思えば領主の口利きでこの村の有力者に世話になることになり、初めてここへ来てからずっと迷惑そうな顔を領民達はして「よそ者」と突き放してきた。
 「あっこれはこれは関羽どの、今日も先生よろしくお願いします。」
と、村長も丁寧に応対し頭を下げるが、どう見ても面倒はいやだと言わんばかりに避けている様子が明らかにわかる。
 (きっと、領主は手が余るからこの村長に自分の面倒を押しつけたのだろう。)
 邪魔者にされているのは関羽自身わかっている。だからといって嫌われているから自分が出て行くという健勝な考えは一欠片もない。
 むしろ、
 (お前らと、俺とは違うんだよ。)
 と思うとこの男は優越感に浸ってさえ居たのである。

 とは言え、この境遇にこの男は満足しているわけではない。
 「こらっ、人の髭を引っ張って遊ぶな。」
 「こんな問題もわからなくて、テメエは張飛かっ。」
 そう言って、細かく無骨に見える彼だが意外にわかりやすく、子供達に勉強を教えなかなか目下の人間に対しては(ちょっと押しつけがましい感じもするが)面倒見のいい男で、意外と子供の先生にはあっている。
 とはいえ、ガキの面倒を見たり、片田舎で村長の家に居候するためにわざわざ、北の地からやってきたわけでもなければ、頑張って学問を修めた訳でもない。
 (それなのに、ガキの面倒ばかり見させられて。)
 しかも今は、ガキよりももっと手のかかる面倒を押しつけられているような気がする。
  


   


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カレンダ
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