真三國志-20-



2008年06月04日(Wed)
真三國志-20-
 でも逆に言えば突拍子もないことを言って話題をそらしたのは、玄徳自身反論を出来なかった事に他なかった。もし本当に自分の軍が強いと思えばあくまでそう主張すればそれで良いのだが、それが出来なかった。
 (これからの軍だから、鍛えれば強くなる。と本当は言うべきであろうが、それが出来なかった。)
 「所詮、一族に金を出してもらって洛陽に行ったのに、遊び続けて結局廬植先生の下でしっかり兵学など学ばなかった報いだ。
 用兵などの専門的知識を勉強しなかったお前が、兵を強くして一軍を率いると言うことが出来るはずがない。俺様と違って所詮傭兵の大将が限界なんだよ。お前は。」
 公孫賛はそう言って玄徳を笑って、去っていった。

 (確かにそうなのだ。)
 玄徳は廬植の許で学んだが最後まで用兵を理解しきれなかった。その所為で勉強する気も失せて、最後まで勉強しなかった。
 (彼らをどうしようか)
 彼らをつかってどう功名をたてようか。と言うことよりも、彼らの命を無手谷してはならないという思いが、玄徳を気重にする。
 数は集まった。だが統率の取れた軍にするには寄せ集めの軍団であるからこそ並の困難ではない。それに相手は黄巾党人数が違う上、統率する者にも知勇に優れた者はたくさんいる。そんな者が襲いかかれば何とかまとめている状態の玄徳など、あっという間に蹴散らされてしまう。
 (蹴散らされないだけの芯がない上。追い払う力強さが、寄せ集めの我らにはない。)
 街にはいよいよ「黄巾党を討つ者を求める義勇軍の募集」の立て札が立てられたが、このまま玄徳の部隊が乗り込んだとしても、部下達を無駄死にさせるだけである。
 (そうすると、このまま我慢して用心棒をしながら力を蓄えなければなるまい)
 そしてそれをいつまで続ければ、打開策が見つかるのか・・・・ただでさえ公孫賛に比べ後れを取っているのに何年かかるともわからない現実に思わずため息が出る。

 「いい若者が、義勇軍の立て札を見て、何年寄り臭くため息をついているんだ。」
 そう言う声と同時に、とてつもない力で玄徳は背中を思い切りたたかれ、息が詰まる。思わず涙が出そうになる。
 (なんだなんだ。)
 「おうおうっ、皆まで言うな。俺様に付いていけば大丈夫だ。出世させてやるぞ。」
 ぐはははははっ
 という言葉とともにあたりに酒臭い香りが立ちこもる。
 「おう。俺と一緒に天下を取ろう。」
 「テメエは俺軍に入って出世をしようぜ。いやだとは当然言わないだろうな。」
 そんなことを言って丸顔を真っ赤にした酒飲みの危なそうな男が豪快な笑い声と一緒に有無を言わさず周囲の者達の首根っこをつかんでは、酒臭い息をまき散らしながら、上機嫌に恫喝しながら歩いていく。
 (まるで、嵐のような男だな。)
 そう言いながら玄徳は背中をさすり、ふとある考えが頭をよぎる。
 そして、先ほどの憂鬱が嘘のように満ち足りた笑顔を浮かべる、みんなが迷惑そうに見ているその男を親のように温かい目で見送った。

(第一話玄徳の章「不良青年玄徳の憂鬱」−終劇−)
次回、第二話関羽・張飛の章に続く・・・・
 

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