月姫抄11 |
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2008年07月19日(Sat)
月姫抄11
それ以上に今は信長の軍と主様の軍が戦っている最中である。余所者の中に信長の手のものが入り込んでも不思議がない状況である。
どう見ても怪しいとしか思えないほど、うさんくさい男をどうして身の回りに置かなければならないのだろうか。 「なにとぞお願い申し上げます。上方には知り合いも多く絶対に月姫様にはご損はさせません。なにとぞなにとぞ。」 まるで詐欺師のような台詞を並べ、おかしくなるほど年上の男が頭を下げる。余計嘘っぽく聞こえてはいるものの、その様子には騙す者の陰湿な感じはなく、狂言を見せられているような滑稽さがあって、自然に気難しさを見せてしまう月姫の口元を緩ませてしまう。 (まぁ……いいか。) 明らかに怪しい人間よりも陰で何を考えているか分からない人間を置く方が、余程危険が多いかも知れない。何より、この男には武士が持つ人を殺す事に対する傲慢さや罪悪感が無い事や、男である事や武士である事への虚栄心が無い事、子供のように欲望や行動に純真な所は、側にいて不快な感情を持たせないのである。 「折角の維盛殿の申し出であるから。いつもいつもご厚意をお断りして居るのだから、ありがたくお受けしたいと思います。ただ……」 そう言いかけて月姫は心の中で呟く。 (一つどうしても気に沿わない事がある。) 浦島家家中の者が全て信長の海軍などに負けないと思っているのに、維盛だけはそう思っていない。のである。 「まあ、よい。それでお主はなんと呼べばよい。」 月姫が男に問いかけると、男は顔を上げニコニコと見つめ「それは月姫様が、お好きに呼んで下されば結構です。」と言ってへらへらしている。 (……、普通。身分が低い者はおそれおおくて顔を上げてジロジロ値踏みするような失礼なまねはせぬのに、この男は厚かましいな。) 「じゃあ@禿げネズミ A色魔ザル Bスケベジジィ 折角だからこの中で好きな物を選んで下されれば……。」
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