月姫抄 |
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2008年04月11日(Fri)
月姫抄
彼女は玉のような汗を強い日射しと重たい武具をまとい先勝祈願の舞を必死に演じる。
歳を老いた武将はその舞の美しさに驚嘆し、老いた侍女は神々しい姿を前に織田信長との海戦に遠征に行く家族の無事を祈り目を瞑り、彼女の姿に手を合わせている。 しかしその一方で、その場にいる人達の殆どの者が逆に彼女の舞を冷淡に見ていた。 現に奥の上座で見ている女性達は、真剣な彼女とは反対に笑みを浮かべている。嘲りを込めた笑みである。そして、周りに聞こえるにもかかわらず、声に出して呟く。 「戦勝の舞ですと・・・・、そんな物が本当に力があるのなら、香内氏・須江氏も滅びはしなかったでしょうに。殿も何故あのような凶女を大切にするのでしょうか。」 「本当にそうですわ。このような舞を踊らなくとも我が無敵の水軍なら信長になど負けはしないでしょう。」 口々に侍女達は悪口を言う。そしてその言いぐさと時より向ける視線はその横の中心にいる領主の正室の女性に同意を求めるようであった。 その女性は一番高貴な着物をまとい、大人しそうな容姿と瀬戸内の水軍には不似合いの透き通るような異常なほど白い肌をしていた。また彼女は室町幕府の重臣の娘からこの浦島家へ嫁いだ・・・ということで京の雰囲気を身にまとい周囲の人物とは気品の面でも抜きん出ていた。 彼女はじっと唇を噛みしめ、今にも斬りつけてきそうな敵意を込めた視線で舞とそれを演じる女を見ていてる。 他の女達者達も笑みは浮かべているもののどこか作り物めいて、根底に流れる侍女同士の嫉妬や確執がそれぞれ目を合う度に心の刃をまじあわせている。 華やかげな様子とは裏腹に、舞が美しいだの綺麗などとその演技を楽しむ空気は全くなかった。 男達も盛んに耳打ちをし合いこの戦の今後の有り様や自分たちのみの振り方について情報を交わしているようである。 そんな集中されない中で、一人月姫は周囲のざわめきや喧噪を気にする様子も見せずに何事もなく悪意の言葉達を心の中にしまい込んで、自らの舞を演じ切った。 |
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カレンダ
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