月姫抄−1 |
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2008年04月09日(Wed)
月姫抄−1
浦戸の関にて先勝祈願の奉納の舞がおこなわれたのは、織田信長の軍と瀬戸内の水軍の決戦を目の前に控えた……ある真っ白な暑い日射しの中であった。
その日射しと同じ、白の装束と具足をまとい剣を天へと向けながら舞台に上がった人物は、そのそばに控えた横笛の名手の笛の音に合わせて小さな体を大きく振る舞う。 もしも戦いに出払った男達が、その剣の鋭さと身のこなしを見たのなら、かなりの剣の手練れの者とに思う程天賦の才を見出しただろう。 舞手は堂々と毅然としたその仕草や鋭く空気を切り裂くような剣の舞う姿。 にもかかわらず、強い日射しは溶け込みそうな程であったのはその堂々たる若武者という出で立ちには少し華奢な姿の所為であろうか。 しかし華奢な事には理由があった。舞手は武将ではなく女性であった。 更に正確に言うならば女性であって女性ではなかった。更に言うならば人間であって人間ではない存在であった。 天照宮の神に仕える神女として、神に仕え人の幸せとは無縁の所で生きる事を女であった。 名は月。月姫とよばれ瀬戸内水軍の守り神の鏡に従い、僅か十七という年齢でありながら、香内氏・須江氏・浦島氏と浦九郡島の支配者が代わる度に運命を流転した女性である。 彼女は玉のような汗を強い日射しと重たい武具をまとい先勝祈願の舞を必死に演じる つづく
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