ケイタイ小説カフェ「ソルノチェセル」 - 2008/11

刹那のミニミニ小説+連載小説のサイト。

2008年11月30日(Sun)▲ページの先頭へ
真三國志曹操編−65−
「何故、梁商梁商が死ぬ必要があるのだ」
 手を合わせながら皇帝はその問いかけを誰かにする。
 曹騰の反対勢力を皆殺しにした。それは両一族の反対勢力の筈でもある。
 これにより旧態の抵抗勢力も一掃されたのに
 (我らの思う政治ができるようになったのに)
 感傷的に皇帝はなる。しかし涙を見せることは過ちと認める事になると考え何事もなく時間は過ぎ去り宮廷に戻る。
 「ありがとうございます。」
 梁后は戻った皇帝に葬儀へのお礼を娘としてする。その表情に咎める様子は見えない。父親を見殺しに結果的にしたことは辛いことではあったが、だからといって旧態としている人間達が、皇帝自身にしてきたこと、今彼らが何かと逆らうことを考えたら、彼らは除かなければならなかったのである。
 (その為に必要な事を父は分かっていて知っていた。自ら調整役となり緩衝役となり死んだのだから、恨むつもりはない。)
 彼女はそう考えて何も言わなかったからこそ、皇帝は逆に辛く感じられた。

 「顔色が良くありませんが」
 曹騰がそう心配をするが、皇帝はそれを一笑する。だがその笑顔は引きつり硬い。
 吹っ切ってはいないという様子で、その視線は時々泳ぎ迷いがある。
 (仕方ないじゃないか)
 そう何度も言い聞かせたが、皇帝の支援者でなくなったのは梁商が初めてでおり、父親を亡くしたときよりも痛みは生々しく響いていることを自覚せざる負えなかったのだ。そんな彼とは裏腹に、肉親である筈の梁冀の方は悲しみのかけらもなく、差すますその声や言動に力があふれているようである。
 父親が死んで間もないのにもかかわらず
 「父の跡を継ぎ大将軍にしていただきたい」
 と、要求しに来たのである。思わず、その言いぐさに宦官の一人は顔を背けたが、宮廷内はともかく、政治本体は反曹騰派の粛清によって、彼をしのぐ実力者が居なくなっていたのである。
 早急な申し出であり、なおかつ父梁商に較べれば実力的には勝るとも劣らぬとはいえ、人格では劣ると言わざる負えなく、それ以上に皇帝を飲み込んでしまうほどの野心をぎらつかせていると言うのがこの男である。

 

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2008年11月29日(Sat)▲ページの先頭へ
ホワイト・プレゼント3
 車に乗り込もうとすると、柴又は向こうにいたケーキ屋のアルバイトの女の子達を呼び寄せ、俺の前に並ばせる。
 「先輩・・・・これから彼女達と合コンしませんか。彼女達先輩の事ホストみたいでカッコイイって・・・・。」
 俺は不覚にも一瞬固まる。確かに張り込みをしていると派手でホストの兄ちゃんかと呼ばれるが・・・そんな事より彼女が居るのに、なんてまめな奴なんだろうか柴又は。
 容姿の善し悪しよりもこういう奴が、一番世の中でもてるのであろう。
 「・・・・悪いが。今日じゃないとダメな所があるんだ。」
 俺が面倒でそれだけ答えると、あの野郎大声で余計な事を言う。
 「聖夜ちゃんですか。
 先輩イブになると必ず、あそこに行くから。」
 「やだぁっ聖夜ちゃんってこの人の彼女なの。」
 アルバイトの女の子が歓声を上げる。
 「そうっ、先輩の彼女はなんと高校生。」
 更に柴又は余計な事を言う。
 「うそっ、警察なのに手を出したら。東京都の条例違反じゃん。」
 「鬼畜よねぇ。獣よねぇ。」
 ・・・・やかましい。誰が手を出したと言うんだ。
 大体にして、確かにアイツの言う事は場所はあっているが正解ではない。彼女に会いに行く訳ではないのである。
 
 2年前のクリスマスの日高校の同級生が心不全で死んだ。
 死体の側にプレゼントがあった。中身は白い粉が入っていた。
 麻薬だった。
 それによる中毒により心肺機能が停止したのである。
 
 送った奴は・・・これも俺の同級生で元野球部の奴だった。もともとコイツはろくな奴でなく、その女と付き合っていて二人ともシャブの常習者だった。彼女の死ぬ瞬間まで一緒にいたらしい。
 捕まった時、どうやら量を間違えたという。たくさん服用すればたくさん快楽を得られると思った・・・そんなうざけた事を言っていた。
 まぁ、その時はこれで事件が終わった筈だった。これで事件が追われば俺も正直辛くはなかった。
 だが奴から出た真実はそれより重たい物だった。
 彼奴らは俺が警察に就職した以前よりすでに麻薬を使っていた事。更に、その麻薬の胴元だったのが、同じクラスの奴で比較的親しい奴だったのである。

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2008年11月28日(Fri)▲ページの先頭へ
ホワイト・プレゼント2
 「先輩。今回の事志願したのは。麻薬の事だから・・・違いますか。先輩いつも麻薬の事になると、ムキになるから・・・」
 余計な事を言いだしたので、俺は車のキーとケーキの空き箱を押しつけ。そこから離れる。
 「ちょっと一件行く所がある。不審そうな奴を見逃すなよ。」
 「先輩何処へ行くんですか。大体情報屋の言っていたサンタのカッコしている売屋ってどんな奴を捕まえればいいんですか。」
 大声でコイツは聞いてくる。あのなぁっ、犯人にも聞こえるだろう。
 「だから説明しただろう。ゆうっのプログのmyメニューに書いてあるのが偽物のサンタだから捕まえればいい。
 だからアクセスしてみろっ」
 後輩は意外な趣味があるなぁと思い、携帯でアクセスする。
 「・・・・ちょっと先輩。これって単なるネタじゃないですか。
 もうっ、5分以内に戻ってこなかったら泣きますよ。」

俺が一カ所アクセサリーの店から帰ってくると、後輩の柴又はまじめに怖い目つきでサンタの姿を追っている。
 「おいっ不審な奴は居たか。」
 「綾瀬さん。クソ長いですねっ。正直誰が怪しいか何か分かりませんよ。アバウトな話じゃないけどサンタが多すぎて。」
 それぞれに柴又は指さしていく。その中のカップルと話し込んでいるサンタの手の中が光ったのを俺は見逃さなかった。
 「バカ。バイヤーのアイツ・・・は(どうせお前では捕まえられないだろうから)俺が行く。お前はあの女を捕まえコインロッカーの場所を吐かせろ。」
 「はぁ。」
 「アイツコインロッカーの鍵を渡していた。そこにブツ入れて現金と取り引きして居るんだろっ」
 そう言うと、アイツを置いて俺はそのサンタを追いかけ、路地に引き上げる所を後ろからニードロップを食らわせる。
 
 似合わないパトカーが止まり、サンタクロースが乗せられる。同じように彼から鍵を受け取った女も警官に囲まれ連行されていく。
 顔をさすりながら、さも得意げに柴又は俺に声を掛ける。
 「やりましたよ。すげぇ量の麻薬。この後彼奴ら・・・高校生なんだけど・・・仲間集めてこれでパーティーするつもりだったらしいですよ。
 親に育ててもらっている身で何を考えているのか。ろくなもんじゃねえなぁ。」
 なんか親父臭い事を言っているようだが、俺は返事をしない。別にそんな事はどうでも良かった。捕まえた事実さえ手に入れればそれ以外は興味はなかった。

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2008年11月27日(Thu)▲ページの先頭へ
ホワイト・プレゼント1
繁華街に、ジングルベルのメロディーが流れる。
 彼の目の前を、沢山の人々が通り過ぎる。そこにカップルらしい男女が多いのは今日がクリスマスイブと言う事だからだろうか。
 直ぐそばに、そんな華やかな雰囲気があるのに何処か壁があって遠い世界に感じるのは、相手が居ない所為なのか。それとも仕事の所為なのか。
 「先輩、買ってきました。差し入れ。」
 今時珍しい刈り上げ頭の男が、派手な紙バコに入った物を俺に差し出す。
 嫌な予感はしたが、開けてみるとショートケーキが入っている。
 「メリークリスマス。」
 その男は俺にそんな言葉を掛ける。俺は正直目眩を思える。
 「あのなぁ。食い物買って来いって言ったが、普通こんな物買ってこないぞ。」
 「いいじゃないですか。クリスマスなんだしっ。」
 「まさか手作りじゃないだろうな。俺はホモなんかじゃないぞ。」
 「僕だって違いますよ。文句言うなら食わなければいいでしょ。」
 そんな事を言っても、こっちはずっと立っていてお腹が減っている。カロリーが高そうだが、生まれてこの方太る事に心配した事はない。正直甘い物は好きなので、構わずそれを食べる。
 「・・・・所で先輩。こんな所で麻薬の売人が、シャブ売って居るんですか。そいつだってこんな日は、彼女といい思い出を作って居るんじゃないですか。
 僕だって、何を好き好んで先輩とイブを過ごさなくてはいけないんですか。せっかくの彼女のデートの約束断らないといけないなんて・・・全くたまんないよ。」
 大げさに、アイツはため息を付く。確かにコイツには大人しめの彼女が居るから。可哀想と言えば可哀想だという気持がない訳ではない。
 「まぁ、嘆くな若者。お前もデートの後は彼女と二人で・・・という口だろう。居るんだよ、世の中には薬の力を使わないと事に及べないバカも居るんだよ。
 それに文句を言うなら、ボスに言えばいいだろう。」
 「柳沢警部補ですか・・・。あの人『困るよ、困るよ』って言って、人の話聞かないからダメですよ。大体先輩がいけないんです。自ら志願してこんなのを引き受けるから。
 まぁ、警官だから仕方ないと言えば仕方ないんでしょうが。」
 更に文句を言う。確かに俺達の上司は数々の事件を解決した名刑事であるが人の話を聞かない。俺だって好き好んでここに居る訳ではない。あいにくデートの約束はないが、こっちだってやりたい事はたくさんあるのである。


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2008年11月25日(Tue)▲ページの先頭へ
真三國志曹操編−64−
 (ああそうか。)
 温厚な人間という評価が高い曹騰であるが、その時彼には始めてその冷淡な本性に気が付き、絶望を突きつけられる。
 曹騰という人間はきわめて合理的な性格であったのである。
 禾中ロについても結局は有能な人物であったからこそ殺されずに済んだのであり、そうでなければあの3人と同じように、ゴミくずのように捨てられていただろう。

 仕方なく皇帝に申し出て捜査を取りやめるように訴え出る。
 だが皇帝の意志は固く拒絶する。
 「私が生きていられるのは3人のおかげである。その中の曹騰は私と一番つきあいが長く、一番気心が知れており、我が半身の様なものだ。
 それなのに、小賢しい人間が下らぬ策を要し、私に屈服しようとしないばかりか、我が身を引き裂こうとするのなら、私は絶対許さない。」
 強固な意志と、蛇のような執着心を見せる皇帝に、梁商は父安帝の姿を彼に見た。
 (説得はできまい)
 そう覚悟を決めざる負えなかった。それでも彼自身は無駄な血を流さないようできる限りの努力を払うことを決意する。
 とりあえず死罪の決まった者に対しての助命を乞い李固などの人物に昼夜をかまわず説得をしたり、嘆願書を書き必死に働きかける。
 だが死罪に決まる人間は数か多い上、日々次々と増えていく。それでも諦めずに梁商は寝ずに必死に努力を続けた。

 その無理がたたり突然その運動中突然倒れる。過労により病を発した。
 それでも彼は皇帝の不退転の決意を知っていたからこそ、これ以上皇帝に知らせることなく内々に人を救おうと運動を続ける。
 だが思うようにならず、そう言う恐怖政治に人々が批判を妻の婿である皇帝に向け事と肥大する一族の心配しながら、休んでいても心し疲れていく。
 急速に衰弱し、皇帝に気が付かれぬまま……病に反抗することができないまま、ついに屈して命を落とす。

  

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2008年11月24日(Mon)▲ページの先頭へ
真三國志曹操編−63−
 現実的な問題から人材不足も深刻であり、このまま行けば望む望まないにかかわらず梁一族に権力が集中するようになる。息子の梁冀は野心が強く横暴で専制を行ってしまう可能性がある。一族が力を持つこと自体は梁冀梁一族にとっては良いことであるはずなのだが
 (その結果皇帝にとって脅威になれば、我が一族は皇帝により粛清されかねない)
 その恐れがあったからこそ、梁商は敢えて慎ましく、外に対しては融和を図ってきたのである。

 「貴方の怒りもお察しいたしますが、曹騰殿を日頃恨んでいたあの3人が死にその陰謀の中枢にいた人間が捕らえられ処刑された以上、敢えてこれ以上死者を増やす必要はないと思います。これ以上政府の人材が減り政治に支障が出れば皇帝にも影響力が出かねません。禾中ロ殿を許されたように、彼らへの怒りを収められてはいかがですか。」 梁商は曹騰にその事を話し、彼の口から皇帝にこれ以上の調査とそれが産む死罪を止めるよう申し上げるように依頼をした。
 曹騰にそれを頼むのは本来筋違いではあるが、逆に言えば一番の被害者である彼からもう良いと言えば皇帝も挙げた拳を振り下ろせなくなるのである。
 それに対して曹騰は一つ一つ頷き
 「私自身は今更彼らには全く恨みはありません。」
 と同意はしたが、その後の言葉はつれなかった。
 「ただ、皇帝は先帝や閻太后らに酷い仕打ちをされてもひたすら我慢し絶えてこられ、自分の思いを押し殺してきました。その姿を見てきた私は、順帝が皇帝になられた今、彼の思うように生きて欲しいと思うのです。」
 そう言って、梁商の申し出を拒否する。
 「しかし、」
 「皇帝は英邁な方です。皇帝には皇帝の考えがあると思いますので下々の私が言葉を話すべきではないのです。それに、」
 更に食い下がろうとする梁商にキッパリという

  「私自身皇帝に必要な人間については禾中ロ殿のように皇帝に対して助けることはできますが、今回について死んで惜しい人間など誰が居たのでしょうか。」
 その問いかけは、言い換えれば禾中ロのような有能な人間でなければどうでも良いという考えである。

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2008年11月23日(Sun)▲ページの先頭へ
真三國志曹操編−62−
 すると政治クーデターの企みが出てくる。
 彼らは盛んに密談をしており、どうやらまず曹騰に無実の罪を着せ彼を処刑し、彼の推挙により栄進を果たした李固らを失職させるとともに、梁氏についても同様にして滅ぼすことを願ったのである。
 その証拠に、曹騰を用いることで宦官が力を付け、梁氏が力を付けることで外戚が再び力を持ち、皇帝に脅威になること、彼らの争いが起こり漢帝国が混乱と衰退を起こすことを皇帝に上申する文章が見つかった。

 その予見は後に現実になる物であり、彼らのクーデターを利用して両者の影響力を排除して漢帝国の皇族の力を守る方法も順帝にはあった。
 だが順帝はその道を選ばなかったし、それ以上に勝手に皇帝の名を使ったことを問題にしたのである。
 直ちに張逵、蘧政、楊定の3人を捕らえ曹騰の代わり投獄し、翌年すぐに彼ら3名を処刑した。

 だがこの事件はその3人の処刑では終わらなかった
 「他にも徒党がいる筈。調査し共謀したものたちを捕らえ死罪とせよ。」
 そう言い禾中ロに皇帝は更なる調査を命じる。
 張逵、蘧政、楊定の3人の上申書に名を連ねた者。彼らの密会に参加していた者、特に結びつきが強かった者、積極的に曹騰に対して誹謗を行い彼の追い落としに荷担した者など、次々と投獄され、死を与えられていったのである。

 その結果、梁一族や曹騰の口利きをした人材が残り、彼らを消して快く思わなかった人間達が政治から消えていく。
 「このままだと、政治を行えないほど人材が居なくなる」
 首相的な立場から、政治を掌握する梁商はそんな危惧を呟くとともに、暗い表情をする。皇帝に地位についたとはいえ、先代から続く勢力に融和を図り、彼らとの間を取りなしながら難しい政治を行い続けたのは彼自身の努力と人柄の賜である。
 彼は積極的に対話をし、時に彼らに譲歩し、時に彼らの理解を取り付けるために辛抱強く説得をし、その結果少しずつ分かち合えるようになった。
 その為彼の知り合いになった人間の中にも、皇帝から死罪を賜った者達が多くいたのである。

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見えない翼
いにしえ、人々の祖先は天使だった。
地上の人々には翼があった
でもその翼は一度空に登ることを忘れてしまったら
諦めてしまったら
二度と羽ばたけなかった。

そのうち人々は上を目指すことが
意味のないことだと悟り
やがてその翼は不要になり
人々から羽根は消えていった。

でも天使の羽根は見えなくても
本当はあるの
人は本当にもっと高くへと望むなら
未来へと羽ばたける

そんな翼を貴方も持っている

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2008年11月22日(Sat)▲ページの先頭へ
真三國志曹操編−61−
 皇帝の信頼の厚き曹騰が皇帝の命で捕らわれるはずがない。
 「そんな筈がない」
 と孟賁は文句を言い詰め寄るが、書状にはしっかりと皇帝の玉爾と名前が勅命として記されている。
 「まさか」
 そう彼は絶句し呆然としたが、そんな彼と曹騰は有無を言わさずに兵士達に連行され、投獄される。
 「一体どういう事なのか。」
 今度は曹騰に対して孟賁は問いかける。その問いに答えず曹騰は「大事はないだろう」と言うと横になり目をつぶり体を休める。
 そうは言うもののいかにも人が悪い男が翌朝を待って罪状を歌い上げ首を切るという。皇帝が最後の頼りであるが早朝と言うことであれば、皇帝が起きる前に首が切られる事になるのだ。
 そんなことで不安な孟賁に対して曹騰は不安の様子は見せず、むしろ彼を捕らえる陰謀を張り巡らせた人間を心の中であざけ笑っていた。
 「馬鹿な事だ。翌朝まで待たずにその場で切ればいいのに。こんな事をしたら皇帝から許されるはずはなかろう。」
 その言葉には全くと言っていいほど死を恐怖する様子は感じられなかったのである。

 すぐさま皇帝にその陰謀は伝わっていた。
 曹騰の事を調査していた禾中ロが、その異変を察し皇帝に申し出たのである。
 その報を予期していたかのようにすぐに面会を許し謁見し話を聞くと
 「朕はそのような命令は出していない。それなのにこのような事があるとは何人かが朕の名前を騙り勅命を発したのだろう。
 その偽の勅命を曹騰に差し出した者達を直ちに捕まえるとともに、その背後で企みをした者を即座に捕らえよ。」
 と直ちに禾中ロに命じる。

 即座の行動で、すぐにその二人の偽の勅使は捕まえられる。そして彼の口から、曹騰と同じ中常侍である張逵、蘧政、楊定などの名前が出る。
 いずれも彼らは事あるごとに曹騰に対して異を唱えていた反曹騰派の宦官である。
 直ちに彼らを捕らえるとともに彼らの屋敷を家宅捜査する。 

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2008年11月21日(Fri)▲ページの先頭へ
真三國志曹操編−60−
 「いやー生きた気持ちがしなかった。」
 謁見が終わるとはその話題の人物に呟く。
 「皇帝が『後ろ盾がなくその仕事を評価して殺す意志がない』と言うのであれば返事があったとしても、そなたが陰謀の片腕を背負うという事を疑われる事もないだろう。私がこれ以上念押す必要もない。」
 と何事もなく窮地から戻った彼にそんな事を言う。その様子に悪気はなく、彼の事を考えた策なのだろうか。
 「曹騰殿に何かがあったら、真っ先に疑われるのは私だからしかないのですが……だからと言って皇帝にそんな噂を本当は疑っていない私をけしかけて言わせるなど……皇帝が怒って私を切るかもしれないのに。」
 「そう言ってけしかけられ喜々として皇帝に正義を訴えられると行ったのは禾中ロでしょう。この前の益州の件もまだ納得はしていないだろうし」
 意地悪く文句を言う彼に対して言い放つ。
 「……あの件は納得していませんが、あの噂がかなり誇張である事も、貴方の仕事ぶりについては私がない事を一緒にこの国のために仕事をさせてもらったからこそ認めざる負えませんよ。曹騰殿。」
 禾中ロはそう言って負けたという表情をして手を挙げる。つまり曹騰は敢えて彼にそのことを皇帝に確かめさせたのである。

 「人の悪い事をなさる。」
 曹騰の許を訪ねた彼の盟友の孟賁はあきれ顔をして、そう呟く。だがそんな表情をしていたものの、その意図は明確に理解していた。
 「清廉で名高い禾中ロがそう進言しても皇帝が否定されたとしたら、噂を流した人間達は無駄と知るだろう。それどころかそんな噂を流した者達は皇帝が殺すなど言ったとなれば震え上がって恐れ入るだろう。」

 そんな事を言っていたところで、突然あたりが騒がしくなる。
 やがてすぐに、使用人と一緒に二人の男が衛視を何名か連れくつろぐ二人の部屋に物々しくさっきを立てながら入ってくる。
 「なんだ貴様無礼であろう。」
 孟賁は文句を言ったがすぐにその顔は二人の男達の一人に殴られる。
 そしてもう一人の男が書状を開き大きな声でそれを読み上げる。
 「詔命につき曹騰と孟賁の職を解き逮捕する。」  

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2008年11月20日(Thu)▲ページの先頭へ
真三國志曹操編−59−
 138年若くして中常侍になった曹騰であったが彼の急激な栄進を、同じ宦官で辛苦を続けてその地位に上がった者達にとってみたら面白いことではなかった。
 そして彼の存在と発言の影響力が大きくなる度に、彼の同じ地位の者達にとってみればその分彼らの力が失うことを意味する。
 そんな者達は曹騰追い落としに動く。禾中ロが前に指摘したように、賄賂を受けているなど、政治を私にしているなど、あるいはあり得ない奇行を行っているなど、そんなうわさ話を盛んに流す。
 すると人々は事実がどうこうよりもうわさ話という奴は面白い方に、悪い話は余計悪く誇張され広まっていく。まして成功者に対しては、人というのは残酷で平気でその散在を卑下できるのであれば、考えられないようなむごい事を口に出せる物なのである。
 「・・・・という噂が流れております。是非調査を」
 という事を禾中ロが申し出ると、皇帝は笑い相手にしない。
 「そなたは皇帝である私を愚者と思っているのかもしれぬが、私が皇帝になるための辛苦の時間を私はかの者だけと二人きりで生き抜いて来たのだぞ。彼に付いては私も光と陰も知り尽くしているし、逆に彼は私のことを同じように知り尽くしている。
 皆私が皇帝になってから近く者達ばかりばかりなのに、そんな浅はかな者が私よりもかの者を知ることが出来るというのか。」
 「恐れながら、他の中常侍の皆様方は盛んにその事を危惧されております。」
 更に禾中ロが言葉を重ねると、皇帝は初対面の時見せた蛇のような眼差しを見せる。
 「貴様は、どの者から命じられてそのようなつまらぬ話を私に聞かせているのか」
 その怒号に激しく動揺しながらも、
 「誰からも命じされてはおりません。私自身が間違ったことに対しては許せぬと思うからこそ申し出ているのであり、皇帝の言うとおり曹騰殿に過失がないからこそ、敢えて噂のような事はないという事を皇帝自ら調査を命じて公にすべきなのだと申しているわけであります」
 とムキになって禾中ロは意見を述べる。
 「ふんっ」
 そう不機嫌そうに皇帝は顔を背け呟く。
 「例え万が一、曹騰が悪い事をしたとしても私が彼を咎める事ができよう。彼と我妻だけは私心なく私を支えてくれたのだ。彼らが居なければ私は今生きてはいないであろう。それなのに下らぬ噂を流す小賢しい者ばかり居て、忠義を口にしていて誰一人我が気持ちを推し量る者がおらぬ。
 そんな者達こそ調べ上げて皆殺しにしてくれるわ。」
 そう言った後、苦々しく禾中ロを見てあざけ笑うように見る。
 「二度も朕にこのような口をきいて許されるのは禾中ロそなた一人ぞ。常々、曹騰がそなたは何の後ろ盾もなく……ないからこそ中立で物事を判断し、調査して、事を行える人間だと耳にタコができるほどかの者が言うから今度も許すのだ。
 ただ曹騰にそのように褒められながら、今回について調査が足りないのに私に意見するとは、そなたらしくはない。」
 と言って席を立ち去り際
 「このような噂を流す小賢しい者達の正体をなんとして調査し探し出して私の許へ引き出すように。」
 と彼に命じる。

 


 

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2008年11月19日(Wed)▲ページの先頭へ
真三國志曹操編−58−
 皇帝から「しかるべき者を用意しようとか。」と言われたが、何事もそつなくこなす曹騰である。結局彼自身が養子になる人物を選ぶ。
その者は嵩という夏侯氏の少年である。
 夏侯氏は中央では力が強い歩分けではなかったが沛国譙県に豊かな財を築いていた。そこには彼自身が、地方中央に関わらず経済的優位を持つ者が繁栄を持つことを明敏な頭脳で予期していたのかもしれない。
 また宦官の息子と言うことで、本来なら侮られ出世が難しいだろう。と言う点も曹騰にとっては危惧されることであったが、経済的に豊であればそれでも栄進のチャンスはあるだろうという読みもある。
 またなにより、前漢の高祖に最初から仕えた夏侯嬰の末裔と言う点が曹騰の祖先曹参と重なる部分があったのである。
 一方の夏侯氏にとっても、曹騰と縁が結ばれることは彼ら一族が今度は中央に巨大なパイプを彼を等して持つことが出来たし、曹騰には自然と巨額の寄付が集まっていたので、その資産を受け継ぎ更なる彼の地方における勢力を強める効果が望まれた。

 少年嵩はその突然の話しに戸惑いながらも「私は本来夏侯氏を継ぐことはなくただ穏やかに生きて行ければと思っており、特段出世もしたくはないです。
 また貴方のように物事をこなせる自信はありませんし、宦官にもなりたくはございません。」とやっとの事でその意志を告げる。
 「だからこそ余計良い。」
 曹騰はその様子に逆に好感を持ち受け入れる。彼自身曹家の家名を残すために彼を養子にしたのに、逆に後継者たる彼が宦官になるようならその意味がないのである。
 また穏やかな性格も、曹騰自身が皇帝の一番の側近と言うことで目立ってしまっていているので、逆にそう言う人間が跡を継いでもらわなければ人々の反感や妬みを買いその結果敵を作り、どんな因縁や災禍が降りかかるか分からない。
 (ただ穏やかに)
 人々に反感を買わない人間のほうが、才気を走る人間よりも一族を保たせるという点では余程頼りがいがあるというものである。

 すでに彼自身が望む望まないにかかわらず、ただ穏やかに皇帝の事だけを思い尽くしているはずなのに、知らないところで恨みを買う存在になりつつある事を分かっていた。
 だからこそ、彼に突然窮地が訪れるのであるが、その事もある意味彼自身予期していた物だったのである。

 

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2008年11月18日(Tue)▲ページの先頭へ
ネックレス
貴方のクビに
腕を回して
抱き合うときが
私らしかった

貴方の胸で
泣いていても
悲しささえも
輝いているようだった

ネックレスのように
ずっと貴方と
一緒でいれたらいいのに

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真三國志曹操編−57−
 (難しい)
と皇帝は思う。もし許可したとしたら、宦官が何代も栄華を誇ることで諸公のように力を付けることを、外戚やその他の人間は望んではいない。強固に反対するだろう。
 「どうしてそれを望む。」
 皇帝は問いかけると、強い眼差しを向ける。
 「私は宦官とはいえ、我が家は曹家は祖を第二代の丞相である曹参の宗家です……」
 曹参は高祖劉邦の漢帝国を興すときに最初から付き添った家臣で、人望が厚く彼の挙兵を手助けをした。半独立勢力であった韓信とともに項羽との戦いでは前線で常に戦い先行が熱く、一部では彼が一番の功績者であるという声も多かった。
 高祖が漢を立てると、功臣粛清の嵐が吹き荒れたが、曹参はかなりの権限を持っていたものの、穏やかにそつなく物事を運び栄進を遂げ、優れた内政家の蕭何が死亡するとその政治を継続して漢帝国の繁栄に功績があった名臣である。
 「皇帝に使えるため私は宦官になりましたが、そのことで私の代にその曹参の一族が絶えてしまうことがあればそれこそ私は死ぬに死にきれませぬ。
 私の命はすでに皇帝に差し出しておりいつ死んでも心残りはないのですが、ただ曹参の一族の名だけを残したいというのが我が宿願。」
 「……分かった。」
 皇帝は珍しく感情を表に出し粛々と訴える彼の熱意に圧倒されるとともに、同時にそんな彼の望みがありながら、皇帝である彼自身を支えるためにすべてを犠牲にさせているという事実を突きつけられて、より今度は彼のために自らが出来ることをしなければならない。と言う思いを強く持つ。
 どう考えても難しいことではあるが、
 (彼が私のために死してきた努力と苦難を考えたら)
 逆に考えればその辛苦と較べたら、そんな願いは逆に言えばあまりにも小さいことと言えなくもないのである。
 「分かった。そのことを何とか叶えよう」
 皇帝は約束して、それを制度化する。
 それにより、皇帝は宦官のために特権を与えた事から宦官禍は順帝が原因と批評されることになる。
 宦官とその一族が政治を牛耳ることで政治が荒れていくのである。

 だが、曹騰はその遠因を作りながら彼の養子を宦官にするつもりはなかった。 

 

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2008年11月17日(Mon)▲ページの先頭へ
真三國志曹操編−56−
 彼が立ち去ったあと皇帝は、苦々しく顔をこわばらせながら、曹騰に声を掛ける。
 「本当にこれで良かったのか。」
 その言葉はあたかも、彼を八つ裂きにしないと気が済まないような怒りをこもった冷たい言葉である。
 「良かったんですよ。彼には正義感があり、何事にも屈せぬ勇気があり、なおかつ有能な人材です。皇帝のために命がけのために私心なく彼なら働いてくれるはず。
 口で正義を言いながら結局人は私心で動く者が多いのです。だからこそそう言う人間は珍しく大切なのです。貴方にとって数少ない信頼できる人の一人にきっとなる筈です。」
 曹騰はそう言って笑いかける。すると実際の一番の被害者がそう言うのであれば皇帝も戦いの矛を収めずには居られないのである。
 「君がそう言うなら私は許すが、この世の中私心で人を追い落とすような人間が多い。今は皇帝の私に口では忠誠を誓ったとしても、元々は私の敵のような輩だ。私を支配するため私の片腕になるような人間を、追い落とそうと考えている。私が自由であるためには、私に真に忠誠させる者達を殺されるわけには行かぬのだ。」
 「だからこそ。彼が必要なのです。」
 思い詰めた様子の皇帝に曹騰は優しく励ますように呟く。

 「ところで、今までのお前の恩に対して恩賞を与えたいのだが何が欲しい。」
 皇帝は突然そんな事を彼に聞く。しかしその言葉は初めてであったが、常日頃見捨てずに自分を支えてくれた彼に対してその恩に応えたいと思っていたのである。
 同時に常日頃、私心なく尽くしてくれる曹騰の中に
 (どんな欲望があるのか)
 と言う事が皇帝には興味があったのである。
 曹騰は即座に願い出る。
 「許されるのなら、養子を迎えたく思います。」
 「養子か。」
 皇帝はその答えに思いを巡らせる。宦官は本来養子を迎える事も家名を残す事は許されない。皇帝に最も近いからこそ、その権力を残す事が出来るようになれば、私心で皇帝をしぎゃくしたりするような事が起こりかねないのである。

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2008年11月16日(Sun)▲ページの先頭へ
真三國志曹操編−55−
 「えっ、曹騰が」
 登用された事はうれしいが、それを命じた人間の正体に驚く。出世自体はありがたいが、その意図を理解できない。
 (贈賄は本当で懐柔するつもりなのだろうか。)
 そんな事を考えたが、更なる調査は李固は許さないで釘を刺す。
 「いいかこれ以上余計な事を調べると私たちが許さないぞ。私も曹騰の口添えで登用されたのだから。」
 そう言った後思い出したように更に釘を刺す。
 「言っておくが俺が登用されたのも、お前が登用されたのも、賄賂を送った事ではないぞ。曹騰殿は純粋に有能な者だけを用いるのだから。
 彼が居るからこそ門閥に関係なく我々も重く用いられる事を忘れるなよ」
 (本当かよ)
 そんな思いを持ちながら、皇帝の呼び出しがあり謁見をする。
 皇帝の横には曹騰がおり、険しい表情の皇帝と違う曹騰はこちらを見てニコニコする。先日言い争いをしたのにも関わらず、皇帝は曹騰に目で促されると、蜀郡からはるばる都に上がった労を始めてねぎらうと、先程李固から示された役職を任命する。
 「……曹騰がそなたは有能だと強い推挙があったからこそそなたを用いるのだから、我が為に精一杯尽くせよ。」
 と一言申し伝えて彼を退席させる。
 (また曹騰かよ。)
 とは思ったが、先日の皇帝の怒りからすれば彼の言葉がなければ殺されていたかもしれない。と案内された時の硬い表情を思い寒気が背中を走る。
 (彼のためにこんな目に遭っているのだが、思っている以上に曹騰は人望があるようだ。これ以上彼を追いつめようとしても誰も味方してくれるわけがない。悔しい事であるがお礼を言った方が良いだろう。)
 そう思い、卑屈に思いながらも曹騰に対して感謝の言葉を口にする。
 それに対して曹騰は素っ気なかった。
 「私は合理的にしか考えられないので、そなたが有能な男だからこそ用いるのであって、私に恩を感じる必要は全くない。ただ皇帝は先日の貴方の言われた事は不快に思っているので、頑張って出世して皇帝の信頼を人以上に頑張って手に入れてください。」
 と言って、恩を着せるつもりもなく、自分を訴えた者に対する者とは思えないほど素っ気ない対応である。
 彼にとって見れば少し拍子抜けしたし、やっぱり彼の疑惑を考えるとその言葉もにわかに信じられずに、恩に対しても着るつもりはなかった。

 やがて彼自身が、曹騰に感謝するとともに彼の言葉の本当の意味を知る事件がのちのち起こるのであるが、その時は恐れを知らぬ者の怖さかその程度の認識である。
 

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2008年11月14日(Fri)▲ページの先頭へ
流れ星に願いを
流れ星に願いを掛ける

天上から突き落とされる私に
燃え尽きて消えていこうとする私に

今更
貴方は何を望むの

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2008年11月13日(Thu)▲ページの先頭へ
真三國志曹操編−53−
「下がれ」
 皇帝は短く言い放ち、連行されるような状況で禾中ロは宿舎に戻される。その間怖そうな顔の兵士が必ず付近に張り付いており、監視している。
 (勢いとはいえ、皇帝に対してあんな事を言っては殺されるかもしれないが)
 一方で「俺は殺されるような事をしていないだろう」と自分自身を励ます。
 そんな彼の許に李固が訪ねてきたという。
 曹騰の推挙があったという彼だが、素晴らしい政治家として評判が高く今一番出世をしている人間である。
 その彼が「明日から、私の補佐として副職について欲しい」と頭を下げたのである。
 益州の刺史も地方の高官であるが、中央の要職の方が彼らに対して命令を決め下す立場であり、位の上でも較べ者にならない。
 異例の出世であり大抜擢である。
 「……曹騰が賄賂を受け取った事を突き止めたことに功績を認めてくれたのか。」
 大逆転で皇帝に我が努力が伝わったのだ。
 と思い会心の笑みを禾中ロを見せる。それに対して、友好的な表情をしていた李固はかなり不愉快そうな顔を一瞬見せた。
 「いや、曹騰殿は無罪だ。そなたが賄賂を送ったと報告された官僚は他の者達にも賄賂を送り働きかけをして、その結果住民に迷惑を掛けたために、地方官を更迭される。ただそれだけの事だ。たいした功績ではない。」
 そう今度は李固があっさりと切り捨てると、今度は禾中ロの方が不愉快な顔を見せる。
 (俺が命がけで調査し、訴え出たことを対した功績でないなどといいやがって)
 そんな苛立ちを感じながら一方で、逆にその栄進が余計不思議な物に思える。
 (そんなに曹騰が寵臣であるのなら、あれだけ処罰するようにと私に言われたことは皇帝には不愉快なことの筈だ。
 まして、あれだけ激怒して私を許さないと言っていた皇帝が、自分の言い分に納得していないのにもかかわらず、どうして自分を栄進されるのかがどう考えても理解できないのである。
 不思議そうな顔をする禾中ロは答えを指し示す。
 「確かに曹騰殿は無罪だが、そなたが今回の件について緻密な調査をしたこと、なにより正義感を持って職責を全うしたことを曹騰殿自らが大変高く評価され、皇帝を支える人材として評価され、推挙なされたのである。」 

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2008年11月12日(Wed)▲ページの先頭へ
真三國志曹操編−53−
 まもなく禾中ロに対して都に来るようにと言う手紙が来る。
 (我が意見書で宦官どもを排除することが出来たのか)
 と思い光栄に思え喜んだものの曹騰の処遇についてあわせて訪ねると彼は皇帝から一切処罰をされていないという。
 「生きて帰って来れないかもしれませぬ。」
 そう妻は都に召還するめいを拒むよう忠告をする。
 (そうしたいのは山々であるが)
 皇帝の命であるからそれを逆らう事など出来るわけがない。
 (仕方ない。命の限り曹騰の非を訴え出よう。私の調査自体に間違えはなかったのだから。)
 そう覚悟を決め都に上る。

 朝廷に上がると、早速皇帝に召し出される。
 彼は曹騰宛の書簡を見つきつけ証拠として皇帝に示し、彼が政治を私にすると訴える。しかし、皇帝は
 「曹騰の登用させた人材は班超が再び西域諸国を服従させるなど成果を上げており、彼を帰るつもりは全くない。そもそもその書類は太守が自らの役得のために曹騰に勝手に贈り物をしただけで、彼自身が要求した物ではないし、そんな物をもらった所で曹騰の人を選ぶ目が変わる事はない。」
 と一蹴する。
 「恐れながら、曹騰の所には多くの者が付け届けをしているという話を聞いておられます。例え皇帝が信頼されたとしても、そう言う状況になればいつ人の判断は変わってしまうかもしれません。なにとぞこのような慣例は早々やめていただきたいと」
 「貴様に曹騰の人となりの何が分かるというのだ。私が閻一族に命を狙われたとき唯一私に従ったのは曹騰と妻の梁皇后、梁商父子の4人だけだぞ。
 他の者達は閻一族に媚びるばかりで奴らの理不尽に対して何一つ文句を言わずただ保身と栄達のみを考えていただけではないか。
 そんな者が正義を語るのは小賢しい。恥を知れ。」
 「我は命がけで、我が部下の不正を我が恥と命を覚悟に申し出ているのです。このような贈賄を皇帝がいやしくも許されるのなら、我が命などあっても仕方なき事。」
 「黙れ。」
 皇帝は激怒し剣に手を掛ける。だが何とか剣を抜く事は思いとどまったが、怒りは抑えきれず、反論した事で頂点に達していた。

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2008年11月11日(Tue)▲ページの先頭へ
真三國志曹操編−52−
 その間、曹騰が行った事は皇帝を支えるための人材の登用である。
 当時政権内部の混乱につけ込み高句麗や羌が盛んに侵入を繰り返した。それとともに「虎穴に入らずんば虎子を得ず」の言葉で有名な班超が西域を平定していたが、彼の死の後、北方の匈奴がふたたび活発になり反旗を掲げていた。
 「彼の息子班勇を登用すべきです。異民族は過去の英雄に恐れおおのき神格化する傾向があります。西域諸国が匈奴に従っているとはいえ彼ら自身それも嫌々従っている事。班超は西域の人々の信頼が厚く彼の息子なら過去のいい時代と同じ物をもたらしてくれると期待してくれるはずでしょう。」
 そう進言し彼を西域の総司令官に推挙する。
 また内政面では李固や杜喬を推薦する。彼らは良臣であり、皇帝を支えるだけではなく、外戚として力を持つ梁一族を対抗する能力を持ち合わせていた。

 皇帝からの信頼の強さからか人事に強い影響力を持つ曹騰であったが、その事がある疑惑を生む事となる。

 ある時蜀郡の太守が出世を望み曹騰に賄賂を送り彼の機嫌を取ろうとした。
 現に彼の許へは出世を望む名士達からの贈り物が絶えなかったのである。
 太守は洛陽に上る計吏にその贈り物を託した。ところが彼の上司である益州刺史禾中ロはかねてよりその為に群の人々に重税を課し、公金を懐に入れていた事を知っており蜀郡の太守の汚職を調査していた。
 そんな中郡府を出発した役人が大きな荷物を持っており(怪しい)と目をつけた。
 斜谷関で逮捕しその荷物を調べさせたのである。
 その結果曹騰宛の書簡を見つけた。
 彼に対する賄賂であると確信しさっそく禾中ロは上奏して太守を告発するとともに曹騰もあわせて調べるよう請うたのである。
 だが順帝は、曹騰らを前にその申し出を一笑に付せた。
 「曹騰は朕の信頼が厚くその所為で贈り物が絶えないのは事実だが、向こうが勝手に欲におぼれて贈ってくる物だから彼の騰の過ちではないのに。
 しかも贈られたからと言って曹騰が人事で手心を加えるような人間でない事は李固や杜喬の活躍を見れば明らかなのに。」
 それなのに小賢しく正義心で注進してくるのがかなり空気が読めない人間だと思い、皇帝には面倒に感じた。
 「どうしても余と曹騰と仲違いさせたい人間が居るらしいな。
彼が支えてくれるからこそ、私の今日があるし、未来があるのに。」

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2008年11月10日(Mon)▲ページの先頭へ
真三國志曹操編−51−
 「分かりました。私からも閻太后の件については説得しましょう。」
 曹騰はそう言って納得させた後、皇帝にその旨を奏上する。
 流石に曹騰に説得されると皇帝はうなづきざる負えない。ただその瞳に蛇のような執念は消えていない。
 「切ってはならぬと言うのは無念だ。彼らが私や曹騰に対してやって来た事を考えれば、彼らのを切ったとしても何の問題があるというのだ。彼ら自身が私を殺そうとしていたのに。
 まあ、皆が言うのなら命だけは許してやる。だからってどうになる物ではないが。」
 そう言って皇帝は呟くと意味深げに笑う。
 助命を許された閻太后がどうなったのかは不明であるが、常に重圧を掛けられ続けたせいか。あるいは人を遣って手を下したのかまもなくその命を落とす。
 一方閻太后の助命と引き替えに、閻の抵抗はゆるかった。その間隙を利用して梁冀らは一気に彼らを粛正するとともに、その軍勢を組み入れた。
 更に曹騰は進言をする。
 「孫程ら19人の宦官を功労により列侯に封じましょう。」
 「確かに彼らの活躍がなければ、朕も皇帝にはなれなかっただろう」
 そう言って皇帝は納得したし、梁一族もそれに対して文句を言える問題ではなかった。曹騰は彼らを列候にする事で宦官の力を梁冀ら外戚や有力者達に対抗できる勢力にしようと思ったのである。
 ただこれで皇帝自らが政治を出来る体制を作ったのだが、それをこれからすべての人が納得してくれるとは思わない。
 「閻太后を切る事を許されないのも、すべては皇帝になられた事がゴールではないという事です。これからどんな政治をするのかが問題になります。」
 「……ああ」
 二人はそれらを分かっていたからこそ、時に慎重に、時に繊細に政治をしていかなければならないと覚悟を決める。

 順帝の治世は梁商が中心となり順調な政治が行われる。
 彼自身が優れた政治家であったのだが、それ以上に彼の穏やかな性格と公平な性格と調整力が諸公の不満を買わず、また宦官達との調整も上手にこなして居たのである。

 


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2008年11月08日(Sat)▲ページの先頭へ
首つり
首に縄が掛かっても
誰かに引っ張られなければ
息が出来る

誰かに引っ張られても
その分自分も同じ速さで走れば
意味が無くなる

死にたいとクビを通していても
土台があればまだ生きられている
足許に何もなくなるから
死にたい人はそのまま助からないんだ

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2008年11月07日(Fri)▲ページの先頭へ
優しさという形
彼はフェミニストだった。
女性に対しては良く気配りが出来る人だった。
容姿が優れた人だった。顔は美形だし、足は長いし、
頭がいい人だった。学歴は特筆すべき事はないが、
頭の回転が速く、勘が鋭く、創造性もあった。
彼は真面目な人だった。
それなりに社会的地位も、安定もあった。
彼は意志がはっきりしている人だった。
彼女が好きで彼女だけを大切にしようとした。

そんな彼が、彼女にフラれた。
「何が足りないのか」そう聞くと、女は言う。
「貴方は、完璧だけど・・・
貴方以外が貴方のように強い訳でもしっかりしている訳でもない。
だから、
 貴方の優しさは、凄い気を遣っているけれど
 本当の優しさとは違う気がするの。
 本当の優しさは自分に何か欠けているから
 誰かを必要として、放さない物なのよ」

 彼女が去った後、彼は一人で呟く。
 「本当の優しさか。
 本当の優しさをしたくても、形だけではない優しさを欲しくても
 誰も、私に優しくしたことなどなかったから。
 誰も教えてくれないから、分からないのに。」
 だから、彼女を愛したのに。
 たった一人、愛を与えてくれると信じたのに。

 そして、彼は優しくなった。
 優しさという形を、がらくたのようにまき散らして・・・ 

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2008年11月06日(Thu)▲ページの先頭へ
妖怪作家ベムの苦悩
私の知り合いにHNがベムという人がいる。
彼はマニアっぽいと言うか、カルトッぽいっと言うか、ホラーぽいっと言うか
生き生きとした妖怪を主人公にした作品を数多く執筆し
恐怖の中に隠された技能の凄まじさ・・・
緻密な表現力と、構成力。
想像も付かない独創性で、
「なんでこんな筋が思いつくの」
「うっ、やられたー」
と叫んじゃう程の人である。
その人が、ネット上から失踪した。
「私が持っている物を全て吐き尽くしたから」
と、書き置いて。
私達は慌ててメールを送ったり携帯の番号を知っている者は電話した。
何とか連絡を取れたが、
「書くネタがなくなってしまったから、旅に出る」というのが精一杯だった。
彼は真面目な人だったので、この事態に戸惑った。
そして彼が天才だったから、こんなに苦労して
まるで血を流すようにして書いていた事を知らなかったから、
才能がある事を嫉妬していた私達は酷く凹んだ。

その彼が先週復帰した。
謝罪の後。
「私は旅を通じ、空っぽになった物をやっと埋める事が出来ました。
自分が今まで感じた事を書けばいいのだと悟り
旅で蓄えた事を作品にありのままに書いていきます」とコメントがのっていた。

早速私は作品を見た。そこには以前以上のおどろおどろしい話が次々と載っていた。
・・・・って、今までも全部実体験かよっ

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2008年11月05日(Wed)▲ページの先頭へ
真三國志曹操編−50−
 そして順帝は梁冀らに先導され、宮廷に入り名実ともに皇帝となる。
 ただちに孫程ら19人の宦官は列侯に封ぜられた。世話役人である宦官が名士達に混ざり列侯に命じられることは初めてであり、異例の功労といえた。
 それだけの活躍をしたと同時に、それは新たなる帝国の秩序への布石でもあったのであるが、それについてはまだ人々は知る事はなかった……

 そして栄進する者があれば、同時に罪を問われ罰せられる人達も居る。
 閻一族の者達は、孫程らの動きに抵抗らしい抵抗を出来なかったししなかったが多くの者達が「政治を私にした」として罪を問われ殺された。野王君と閻太后は命は救われたが一切公の場所へ姿を出すことは許されず宮廷にひっそりと留め置かれた……実質的に幽閉され自由を奪われたのである。その後まもなく二人は病死する。

 梁商らがその審議を執り行ったのだが、あまり気分の良い物ではなかったらしい。
 「『政治を私にしたと言う』罪は一歩間違えば今度はいつ我が身に降りかかるかと思えてならない。邪魔者を追い払うには好都合であるが、我ら自体私にしていると言われればそれに値するのかもしれないのに。」
 そんなことを疲れた様子で曹騰にふと漏らす。
 「……ですが、閻一族の勢力は侮りがたく彼らを許せば後々皇帝やあなた方に禍根を残すのは必至です。」
 だから仕方ないことだ。と言い切るほど、彼は冷酷であり同時に客観的に物を見れる精神をしていた。だが梁商はそう言う面では優しく甘い面を持ち合わせて、そんな風に思えなかったのだろう。だからこそ、同時に曹騰はまとめ役として彼の力を新政権では必要にしていた。多分皇帝も同様だろう。
 「なんとか説得して『なるべくいかせられる者は活かさねば、逆に窮鼠猫をかむで死罪になるのならと強固に抵抗する者も出てくる』のでと説得して何とか反乱の恐れがない者達を助けようとしたが……」
 「それは皇帝の責ではなく、私が禍根を残さぬようにと強くお勧めしたことです」
 梁商の不満を察知して曹騰は自分の言葉だと告げる。
 だが彼はそれに首を横に振る。
 「最後まで皇帝は執拗に野王君と閻太后を処刑することを望まれた。私や孫程などすべての者が『例え自分の血を分けた母でないとしても、先帝の妻である以上皇帝からしたら母親に当たる以上、それを害しては孝の道に反することであり、人心を失う』と説得したので、命をお助けになられたが……
 本当は我らが言わなくてもそのことを理解した上で、執拗に彼らを殺すことを望まれたように私は思えてならないのだが。」
 そう言いかけたが、それ以上言ったところで仕方ないと思ったのか、あるいは言ったことが後に波紋を残し彼の一族に災禍をもたらしたり、いらぬ疑心を産むようになってはならないと思い、言葉を飲み込む。
 曹騰は何もそれに対して言おうとしなかったが、梁商の思いは察知していた。
 彼が言おうとしたかったのは「父である先帝の安帝と同じ執念を持ち合わせている」と言うこと。

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2008年11月04日(Tue)▲ページの先頭へ
真三國志曹操編−49−
 「助かる」
 そういうとおぼつかない脚で孫程は仲間達の許に向かう。李閏が味方になればそれなりの兵が手に入る。梁商の手勢をあわせれば、閻の一族の軍が多いとはいえすぐに武力で反撃しようとしても、容易に崩すことは出来ないだろう。
 しかも宮廷は宦官達が押さえ、閻氏の有力者や太后は人質になっている状況である。
 (これで勝てる。)
 そう思い、自らのクビがつながった事に安堵して彼は力が抜けたのである。
 「早くしろ。一人も逃がすな」
 李閏はそう言って檄を飛ばして力の抜けた彼を必死に励まし行かせる。
 彼自身は日和見で権力に従うつもりで居た。その勢いが閻氏から済陰王に変わった。そうなった以上、覚悟を決めなければならなくなってしまったのである。

 孫程達が敏速に宮廷内で閻氏を手勢だけで押さえつける。それはあまりにも薄い袋の中に入れた刃のようであったが、時の勢いは一気に加速した。
 様子見の人々や、直接意識や志もなくただ閻一族にしたがった人達も、同じように日和見であった李閏さえも反閻氏に加わった事で、我先にと一気に雪崩を打って孫程達に従ったのである。
 そうなると、大勢は一気に決した。

 その報が入ると曹騰は済陰王に直ちに皇帝である事を宣言するように言う。
 「皇帝の命として閻一族を捕らえなければ正統性はありません。逆に言えば貴方が、皇帝になったといえば、貴方の命令こそが朝礼として人々は付き従うのです。」
 そう言われても済陰王は正式に決められたわけではないので躊躇があったが、梁商も一緒になり強く促し、覚悟を決める。
 その日の内に済陰王は西鐘下で即位する。後に言う順帝の即位である。

 それと同時に梁冀は軍勢を展開し、李閏とともに都を制圧する。
 閻の一族の兵は多かったものの、彼ら一族の有力者が宮廷の会議に参加しそこで人質に取られたため身動きも出来なかった上、済陰王が皇帝になる事を宣言した事で賊軍という扱いになった。それ以上に居たかったのは、閻一族が旗色が悪いと察知しただけで多くの兵が自分達の命の心配をして逃亡して自壊したのである。

 こうして、あれだけ隆盛を極めた閻一族はたった一日で敗北を決したのである。

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2008年11月03日(Mon)▲ページの先頭へ
真三國志曹操編−48-
 (これで江京を殺したら、閻氏を敵対することになる。)
 勝てるのか……生き残れるのか。
 孫程は自らに問いかける。しかし勝算はなく、味方も少ない。
 「このまま、閻氏の専制を許せば漢は滅びて動乱になる」
 その言葉を酒のように飲み込み、その勢いだけで自分を何とか支えているというのが今の彼の状況である。
 (やばい、震えてきた)
 小刻みに右手が震えてくる。これだとばれると思い、必死に左手で止めようとするが余計ふるえが起こる。
 「どうしたんだ。孫程」
 その普通でない様子に李閏が声を掛ける。
 (悟られたか)
 その瞬間彼を突き飛ばし、孫程は無我夢中に突っ込み、彼の持つ剣はその勢いのあまり、江京の体を必要以上に深く突き刺す。
 (悟られたら、私は殺される)
 「・・・・・」
 どうして。と口は動いたものの言葉にすることが出来ず、江京は絶命する。
 張逵は驚きのあまり声を出そうとしたが、言葉にならない。ここには閻氏の息の掛かった者も居たはずであるが、そんな者達も含めて金縛りにあったように動けない。
 襲いかかってくると思い、慌てて転ぶように深く突き刺さった剣を強引にひっこぬてた孫程は慌てて身構えたのだが、周囲の人々の怯えたような視線と、自らのほほに浴びた返り血で、冷静になった同時に一気に気が大きくなり叫ぶ。
 「先帝の正当の血筋である済陰王を追い落としないがしろにして、閻氏の専制を許した江京を討った。我に逆らい済陰王の邪魔をする者は切り倒す」
 そう叫ぶと皆恐れ驚き、飲み込まれたように身動きも出来なかった。宦官達は目でお互いを見回したが、誰一人逆らう様子を見せることは出来なかった。
 それ程の勢いと形相を孫程はしていた。
 「是非もなし……か」
 李閏はごもるようにそう呟き何事か覚悟を決め孫程の前に立ちはだかり言う。
 「そなたの言うとおり、閻氏の専制はもう許せない程である。この混乱を収めるのには彼らを捕らえ済陰王に直ちに即位してもらわねばなるまい。
 孫程殿は、宦官達を率い宮廷を封鎖するとともに閻太后らを押さえろ。張逵は済陰王にその旨を指示を。私は軍を率いて、都の治安を守る」