ケイタイ小説カフェ「ソルノチェセル」 - 2008/05/15
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2008年05月15日(Thu)▲ページの先頭へ
月姫抄7
始めて暖かみのある感情のこもった声が優しく聞こえ、月姫は波に引き寄せられるようにその方向へと泳ぐ。そして彼が伸ばした手を素直に掴む。
「大丈夫か」 「はい。」 素直に月姫も声に答え笑顔を見せる。それは始めて最期に親子らしいやりとりをした瞬間でもあった。手を握り彼の温かさを感じた瞬間、この男に対してずっと氷壁のように堅く冷たく隔てていた物が嘘のように見えなくなり、逆に熱い物が彼女の中からこみ上げてくるのを感じた。 彼は神妙な面持ちで彼女に謝るかのように頭を下げる。 「すまぬ敵は人ではなかった。千里を駆け神出鬼没の者だった。そうでなければ、我が策略があのような浦島の小僧に遅れなど取ることなど無かった。」 自分に言い聞かせるようにそう呟くと、酷く頭の傷を痛がりながら強く月姫の手を握る。 「このままだと我か一族は滅びる。だが我が一族が浦島などの一党になどに滅びるなど言う事があってはならぬ。だから頼む、そなたの隠す天照鏡を」 「天照鏡を……」 その鏡は竜宮神社の本尊で、歴代の月姫が守り続けた者である。地を鎮め、禍を写し、伝説では特別な力で太陽を操り敵を破ったという伝説の神器である。 「あの鏡は、足利も細川も三好も毛利も……全ての者達が喉から手が出るほど欲しい物。だから、それがあれば彼らも我らを疎略には扱いはせぬ。我が一門の復興もなしえる。だから頼む。」 その言葉を月姫は一方では冷たく聞いていた。 (頼むと言われて、答えられるほど私達は親子の情や恩があるというのか。) だからこそ、目の前の大人が図々しく、哀れであった。 だがそんな冷静な感情とは別に彼女の口は目の前の男の願いを聞き入れて開く。 「天照鏡のありかは……」 「そうか。」 全てを、月姫が語ったとき男が感謝として示した行動は酷く自分勝手で、意外な物であった。 とっさに意識をする前に月姫は波に顔を伏せたが、それよりも前に火がかすめたような厚さを右目の少し上の方で感じ、男の手から自分の手を放す。 同時に海の水がたくさん口の中に入り息が出来ず溺れそうになる。 咳き込むように苦しいが、中に入った水でそれさえも許されない状態で何とか顔を見上げる。すると、もう一大刀目を喰らわせようとする男と目が合う。 |
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カレンダ
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