ケイタイ小説カフェ「ソルノチェセル」 - 2008
刹那のミニミニ小説+連載小説のサイト。
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2008年07月24日(Thu)▲ページの先頭へ
風船
宙に浮かぶ風船。
真っ赤な風船。 自分の力で立って支えて 私が叩いてもしっかりと反発していたね。 今思えば私とのつながりは 細いたった一つの糸だけで 手を放せばきっと私の届かないほど 貴方は高く飛んでいくのね いつか見えなくなるほど小さくなって お空に消えていって 貴方ならドコマデモも飛んでいけると思った 上を向いていても木に絡まる奴もいる 飛んでいるようで最後まで地面に繋がれ 人に利用される奴もいる でも貴方なら例え今小さくても 青い空を超え、遠い宇宙までいけると思った だから空に消えるまで見送った。 ドコマデモ高くいける貴方を地面で見上げながら 知らなかった 貴方が私の言葉の針で こんなに簡単に壊れるなんて
2008年07月23日(Wed)▲ページの先頭へ
真三國志関羽編−20−
「そうか。」
玄徳は関羽に否定されても、特に感情的にはならずに素直にそれを認める様子である。関羽はその時気が付かなかったが、玄徳自身そのことを自覚していたのである。 (腕力に優れているわけでもないのなら、軍略にでも優れているのかと思ったが、……それにしても、本当に素人くさい奴らだ。) (俺ならば……) もっと軍略に沿って組織を固めていくだろう。訓練方法も役割を徹底して行うだろう。 (素人を集めた義勇軍とはいえ、もっと将ならやり方があるだろう。) そんな思いで彼らを見つめる。 「なあ、関羽殿。そなたが彼らを指揮して彼らを率いてみないか。」 「えっ」 「お前の持っている軍略や用兵で彼らを鍛えて、総司令官として我ら1000の兵を率いてみないか。」 突然玄徳はそんな申し出をする。 関羽は一瞬驚き、その内容に言葉を失う。 「全軍を俺に任せるというのか。」 「ああ。確かに軍は素人揃いだが、専門家である関羽殿なら何とかなるだろうし、多少の兵力の劣る部分は張飛殿の武勇が十分補うはずだ。」 (そんな事をしたら。) 玄徳ですら、何もないところから1000の兵を集めることも、張のような有力者から支援を取り付けることも容易ではないことである。 (それなのにそれを譲り渡そうというのか。) 「それなら、俺が一軍を率いて張飛が先鋒を指揮するとしたら、玄徳殿は一体何をするつもりなのですか。」 (軍を譲り渡したら、玄徳は何が出来るというのか。) それに対して玄徳ははっきりと確固たる意志のように言う。 「俺は、張飛や関羽殿のような力のある才能が活躍する舞台を準備して用意することだ。俺には、張飛のような腕力も関羽殿のような軍略も技術もない。 だからこそ、人は自分の能力を発揮できる場所を与えられて、そこで頑張るのが一番良いと思う。」 適材適所 玄徳の言いたいことは単純なことである。 だからといって、それを建前的に言ったとしても本気で人を信頼し仕事を任せて、人を動かす人間がどれだけ居るというのか。 玄徳は関羽の才能を見抜きすべてを任せようとしている。 それは彼の才能をリサーチしてそして実際に会ってみて出した結論かもしれないが、実際に関羽自体が軍を率いたこともなければ今まで戦功があったわけでもない。 それなのに事もなく、自分の軍を関羽にゆだねようとしている。 (よほど器量が大きいのか、単なるアホなのか) 判断が付かないが、ただ一つ言えることは自らの才能に固執することもなければ、自分の不得意をしっかり把握し、冷静に彼は長期的な展望を立てているのである。 かつて自分のあった中にそんな男が居ただろうか。と思うと居ないのが現実だ。 「実際問題として、いくら県令が支援を約束してくれたとはいえ、1000の兵を自らの軍隊として使わせてくれることなどないと思う。 またもし与えられたとしても官軍であれば義勇軍と違い自由に軍を動かすことは出来ないし、上司である人間の言葉に従わなければなるまい。 そうなれば折角の才能も無駄になる可能性がある。逆に我らの義勇軍を率いれば関羽殿の才能をすべて発揮することが出来るかもしれない。」 玄徳は丁寧に、でも現実を関羽に突きつけるように述べる。
2008年07月22日(Tue)▲ページの先頭へ
真三國志関羽編−19−
(あれほど俺に従ってさえいれば、そのおこぼれに預かり出世を出来ると思って付きまとっていたのに、急に態度を変えやがって。)
関羽は腹立たしい思いで酔っぱらいを置いて外へ出る。 暖かい風が吹き込む。何となく不愉快があっぷするがそれでも風に当たることで関羽は少しずつ落ち着きを取り戻す。 (あの傷ついた獣のように人を威嚇するしか術のない張飛を、どうやってあの玄徳はてな付けたのだ。) そんな疑問が沸き、使用人の一人に玄徳の居場所を聞く。 「玄徳様なら、昨日の草むらで、大規模な演習を行っています。」 「演習?」 「程なんとかと言う黄巾党の将軍が暴れ回っていて、それに対して口に出さないが挙兵するという事なんでしょう。」 (馬鹿な。) 黄巾党の程の軍勢は3万と言われる軍勢で官軍ですら手が出せない優秀最大の反乱勢力である。玄徳の軍が500だか1000だが分からないが相手は数十倍である。勝てる相手ではない。 (演習か。) 訓練を行っているというのなら、それに対しての秘策が見れるかもしれないし、張飛の心を動かしたという玄徳の軍隊の状況を見れるかもしれないのである。 関羽はその場所に向かうと、訓練を一通り見ることにした。 その時玄徳の軍はたくさんの馬をその草むらに放した。 その馬を敵に見立てて、集団で追い込んで行く。 その都度玄徳は軍を止めると一人の兵士に細かく手綱を持ち方などを教え、また訓練を再開させる。また、軍を止めて今度は徒で槍を持つ男に構え方と細かい動きを指導して、再び軍を動かす。 (意外と深い考えを持つようなタイプに見えなかったが、細かいことを言う男だ。) (かなりやり方はともかく、細かいところについては独創的だな) と関羽はその訓練を行う。 そしてあっという間に玄徳は演習を終わりにして、引き上げを命じ、細かく指示をしていく。不意に関羽の顔を見ると、残りの指示は人に任せると、関羽の所へ真っ先に近づき笑顔を見せる。 (なぜ見に来ている)とか(昨日戦った張飛と一緒にいたことを問いかけてくる)とか思ったが玄徳はそう言うことを聞かずにニコニコしていた。そして単刀直入に「どうだったか」と関羽に聞く。 (この男、単に自分の軍隊を見せびらかしたいだけなのか。) そんなことを思いながら、でも愛想でも認める言葉は彼の自尊心が許さないらしく辛口に評価する。 「丁寧に一人一人教えていますし、ずいぶん独創的というか工夫はしていることは分かります。ただ、」 「ただ。」 「いかにも素人くさい訓練の仕方だと思います。個々の能力は伸びているかもしれませんが、戦いは集団をどう統率していくか。1人一人の力を結集して、2や3にしていかなければならないのですが、そう言う組織力については上手く指導が行きどどいていないと思います。」
2008年07月21日(Mon)▲ページの先頭へ
真三國志関羽編−18−
「どうしようか。」
とりあえず張飛はもう一度頭の中で玄徳が言った言葉をなぞってみた。 そして自分の身のあり方を考えるが、元々深く考えることが苦手な張飛は人を頼み関羽を呼んで来てもらう。 関羽が来たのは翌日であった。玄徳の許に連れ去られたのにもかかわらず、迎えに来るまではかなり時間がかかった。 正直関羽にしてみたら、張飛がどうしようとあまり興味がなかったし、玄徳が面倒を見てくれるのならやっかい払いできたと彼は思っていたのである。 だから隠していたが嫌そうな顔をして彼は向かいに来た。張飛が玄徳の言った内容について相談したが、あまり芳しい返事でなかった。 「お前が従いたければ、従えばいいだろう。俺は玄徳という奴に従わなくても、今の県令からは何かあったら力を貸して欲しいと言われておるから、義勇軍とはいえ素人連中だ。そんな奴らの力を借りる必要はない。」 「まあ、そうだな。」 別段喜びもしない(別に関羽に対して玄徳が言ったわけではないし、関羽にとって張飛が認められようがどうしようが興味もない訳である。)関羽に対して、正直がっかりしたし、他の人と同じような厄介者を相手にするような態度をうすうす気がついたのか張飛は思わず酒を口にする。 「おい、酒を飲んで暴れるなよ。やっかいを起こしたら酒場でけんかをするのとは違うぞ。」 関羽は酒乱の癖がある張飛をたしなめるが、不思議と張飛はこの日に限り少しも酔いそうな気がしなかった。 それどころか、玄徳の言葉が胸にこだましており、そっちの方に酔っているかのように、気持ちは奪われていた。 (みんなみんなそうだ。関羽のように友人面している奴も、両親のように好き勝手にやらしてくれるが家業を継がせてくれない奴も、俺の力を尊敬し(←それを人は恐れているという)手下になっている人間も、あの草むらでの時のように本当は信頼なんか出来ない。みんな俺様のことを厄介扱いしていて、誰一人本当はまともに扱ってくれないのだ。) (それなのに玄徳という男はどこか違う。少し馬鹿っぽいところもあるが、俺の才能を素直に買っているようであった。大事に扱ってくれた。) 不意に関羽の態度を見ながら不意にある思いが浮かんでくる。 (遙かに兄者の方が将軍として優れているから、俺は従ってきた。でも、俺様の命を賭けて従うべきなのは、俺様のことを一番評価してくれる人なのではないのか。 それに答えて戦い、死ぬことこそ本当の幸せではないだろうか。) (心の中で厄介者扱いする奴らなんかより、少し馬鹿っぽいこの男の方がよほど俺の気持ちや働き場を与えてくれるのではないだろうか。) 目を据わらせながら、そんなことを考え張飛は関羽を無視するかのように酒を飲み続ける。
2008年07月20日(Sun)▲ページの先頭へ
真三國志関羽編−17−
(そういえば)
玄徳という男は思い起こすと始めてあったときから張飛を決して軽くは見ていない。 (「10万の軍と対峙する将になる男だ」) と言うことを彼は言い続けていた。 常に張飛の力を評価する態度で接し続けていた。 それを裏付けるように玄徳は言う。 「手下になれ。とは言わない。ただ良かったら力を貸して欲しい」 「お前のために何故俺が働かなければいけないんだ」 言い方を変えただけだろうと、反発をする張飛。 玄徳はそれに対して首を振る。 「お前自身のためだよ。」 「俺のため……?」 お前の武勇なら、戦いの中では真っ先に戦陣を切るだろう。 戦いは緻密な戦略が勝敗をもたらすことがあるが、多くの場合戦いを決するのは勢いだ。最初の激突で部隊の士気は大きく変化する。 相手が烏合の衆であったり、統制が取れていなかったりすれば、それだけで勝敗が決する場合があるし、初戦を制するかどうかで全体の流れが決してしまうことがある。 「初戦を制して勝つことが出来れば、その勇名は戦陣を切った者となる。 それにお前の武勇で敵の多くの首をあげることが出来るのなら、貴方の武勇は大きく宣伝される事になる。」 そうなれば張飛の出世の道は開かれるのである。 「それに最初に言ったが、これからは騎兵による集団戦が戦いの主になっていく。例えそうでなくても、将は徒ではない。馬に乗り指揮をしなければならないから、その技術に優れていることは決して損にはならない」 そして馬術を習得するには馬商人である張の手下はその道の専門家だ。なにより玄徳はあれだけの荒馬を乗りこなせる能力がある。 彼の言うとおりここにいてそれを習えば、将として必要な技術を習得できるかもしれない。 「と言うわけで、まあゆっくり考えて欲しい。」 そういうと部下に酒を持ってくるように命じて、席から離れる。 「敢えてそなたが酒が好きなことを分かっていて、敢えて我慢してもらったのは、真剣に話を聞いて欲しかったからだ。 言うことは言ったから、ここにいる人間に迷惑を掛けない程度なら酒を飲んでもかまわないから、今日は客人としてゆっくりしていけばいい。」 そういうと言うべきことは言い終えたという感じで、玄徳は席を外していった。
2008年07月19日(Sat)▲ページの先頭へ
月姫抄11
それ以上に今は信長の軍と主様の軍が戦っている最中である。余所者の中に信長の手のものが入り込んでも不思議がない状況である。
どう見ても怪しいとしか思えないほど、うさんくさい男をどうして身の回りに置かなければならないのだろうか。 「なにとぞお願い申し上げます。上方には知り合いも多く絶対に月姫様にはご損はさせません。なにとぞなにとぞ。」 まるで詐欺師のような台詞を並べ、おかしくなるほど年上の男が頭を下げる。余計嘘っぽく聞こえてはいるものの、その様子には騙す者の陰湿な感じはなく、狂言を見せられているような滑稽さがあって、自然に気難しさを見せてしまう月姫の口元を緩ませてしまう。 (まぁ……いいか。) 明らかに怪しい人間よりも陰で何を考えているか分からない人間を置く方が、余程危険が多いかも知れない。何より、この男には武士が持つ人を殺す事に対する傲慢さや罪悪感が無い事や、男である事や武士である事への虚栄心が無い事、子供のように欲望や行動に純真な所は、側にいて不快な感情を持たせないのである。 「折角の維盛殿の申し出であるから。いつもいつもご厚意をお断りして居るのだから、ありがたくお受けしたいと思います。ただ……」 そう言いかけて月姫は心の中で呟く。 (一つどうしても気に沿わない事がある。) 浦島家家中の者が全て信長の海軍などに負けないと思っているのに、維盛だけはそう思っていない。のである。 「まあ、よい。それでお主はなんと呼べばよい。」 月姫が男に問いかけると、男は顔を上げニコニコと見つめ「それは月姫様が、お好きに呼んで下されば結構です。」と言ってへらへらしている。 (……、普通。身分が低い者はおそれおおくて顔を上げてジロジロ値踏みするような失礼なまねはせぬのに、この男は厚かましいな。) 「じゃあ@禿げネズミ A色魔ザル Bスケベジジィ 折角だからこの中で好きな物を選んで下されれば……。」
2008年07月18日(Fri)▲ページの先頭へ
猫の散歩道−使用前・使用後−
猫は思った
使用前・キャイーン天野 ↓ 使用後・本田昌毅医師 ・・・・・一体天野君に何があったんだろう。 注※顔の系統は近いですが、別人です。 ☆☆☆ 昨日三国志更新した筈のデータが消えてしまい 落ち込んでいます。 ので、木曜日・金曜日はお休みいただきました。
2008年07月17日(Thu)▲ページの先頭へ
猫の散歩道−猫は思った「なまらファイター○中...を見て」
猫は思った。
もしもハイスクール奇面組を実写化するのなら 一堂零は、日本ハムのダルビッシュがいいと。 −あのアゴのラインが −あの髪の毛のハネ具合がね −あとあの目がなんとなく ・・・・・・よい子は分からなくていいですっ
2008年07月16日(Wed)▲ページの先頭へ
猫の散歩道−名探偵及川詩織の完全犯罪−
自称名探偵及川詩織
趣味「猫と遊ぶこと」というか現実世界で探偵で食えるほど世の中は甘くない。 ☆☆☆ そういう探偵の所へ珍しく人間がやってくる。 後輩の女の子だ 彼女は暇な探偵にあることを聞いてくる。 「完全犯罪ってあり得ますか?」 「完全犯罪?」 完全犯罪は推理小説の王道だ。興味はあるが、大体そう言うネタは出きっている。 小説なら勝手だが、現実ではあり得ない その見解をふまえて後輩は事情を説明する 「実は、大牟田さんって居るでしょ」 「ああ、還暦の筋肉質のおじさん」 年を食っているにもかかわらずぼるどあっぷしていて自分よりはよっぽど力が強そうな奴である。ポーズを取っているときはもちろんであるが普段もニコニコしていて精神的にも健康そのものの輩である。 そう言えばこいつが、オッサンは若いキャバ嬢と結婚していたと話していたっけ 「その女が若い男と出来ちゃって邪魔になったらしくて、大牟田さんに毒を盛ったらしいの。それもバレないように少量の毒をゆっくり継続させて服用させることで・・・」 (ああ、そういうの時代劇にあったなぁ。) そう思ったが詩織は面白いので黙って聞く。 「先輩が前に言っていたと思うけれど 現在解剖の出来る医師って県に一人ぐらいしかいなくってよほどのことがない限り解剖が行われないから。生前中に事件にならない限りなかなか犯罪にはならないというのなら、今回のも完全犯罪になっちゃうでしょ 大牟田さんいい人だったのに邪魔になったから殺すなんて許せない。」 彼女はそう憤った感じでつぶやく。 憤る気持ちは分かるし、確かに今各所の予算や人員が減らされている今犯罪の検挙率は悪くなっている。 しかしだからといって完全犯罪なんて骨の折れることはかなり面倒なことなのである。 でも「ばれない」とか甘くと言うよりは世間をなめているような楽観的な犯罪者が今は多いと思う。 「そのての犯罪は完全犯罪なんて言ったら笑っちゃうよ。 そう言う死体は消失しても犯罪って分かっちゃうものだよ 全く近頃の若者は『水滸伝』ぐらい読んでいないのかなぁ」 ☆☆☆ 先輩はそう言うが遺体は遺族の意志で解剖もなく、通夜も終わると翌日多くの人の見守る中火葬される。 ボルドアップされた体も、犯罪の痕跡も一緒に高温で焼かれて灰になっていく 「あっ」 本来高温で焼かれた骨は限りなく真っ白になる ところが焼き出た骨は長い間の毒に浸食され、真っ黒くすぐに壊れそうなほどもろかった。 異様なその骨の姿に明らかな異常と犯罪を感じ参列者はざわめく 「なるほど」 犯罪者は悪事はばれることを軽く考えて行う人間と、絶対にばれないと思うから犯罪を起こす人たちの二通りがあるという。 後者のような輩が世の中を甘く見るから犯罪は減らないのである。
2008年07月15日(Tue)▲ページの先頭へ
真三國志関羽編−16−
一方玄徳に連れ去られる張飛は素直に言うことを聞く男ではなかった。
「はなせてめぇ、俺様をどこへ連れて行くんだ。俺様が本気になればお前なんか。」 馬上なのにまだだだをこねている。 そんなことをしていればかなりの速度が出ているので馬から落ちれば大けがをするかもしれない。 (まあ、谷から落としてもこいつなら死なないのかもしれないが。) 「飯を食わせてやる。」 玄徳は短く言い放つ。高圧的かもしれないが、不安定な荷物を運んでいる以上、いくら馬術に優れていると言え、余裕がないのである。 張飛は飯と言われておなかが一瞬なってよだれが出そうになる。 「テメエ、誰が飯なんかで連れられるか。」 慌てて文句をあげたが、「そうか」といって玄徳が突き落とそうと、慌てて「ちょっと待て、食ってやっても良いぞ。」と譲歩する。 「そうか、飯を食べて酒が抜けたところで話そうや」 そう言って玄徳は馬を走らせ、張の商店の住み込みへ案内する。 「見せたい物がある」 そう言うと、玄徳は奥へと案内する。 そこでは1000名の若者達が槍を振って稽古をしている。 「たいしたもんだ。」 張飛は素直に感心する。彼自身50人の人間を集めるのに苦労したのである。その苦労を考えると深い意味はなく感心した。 「いや、駄目だな。」 玄徳はせっかくほめられたのに、あっさりと否定すると、食事の席を用意している奥の間へ案内する。 「どうして。これだけの人数は一つの部隊ぐらいあるぜ」 疑問の声を上げる張飛に対して、玄徳はその彼を指さし断言する。 「お前のような一騎当千の者なら、簡単に蹴散らされるだろう。この軍隊にはまだ二つ足りないのだ。お前のような勇気とあともう一つが。」 「お世辞かよ。冗談はよしてくれよ。」 照れていても自尊心が高い上に単純な男である。張飛は悪い気がしなかった。 「……冗談だと思うのか。」 玄徳も笑う。違う意味で、 「さっき言っただろ。これからの戦いは騎兵の時代。一瞬の駆け引きが勝利を分ける時代になると、そう言う場合お前のように本当に勇気のある者が居なければ所詮烏合の衆。相手の気勢を制することが出来ない。 気勢を制することが出来なければ、後手に回ることになり不利になる。そう言う時代になっていくんだ。これからの乱世は。」 それだけ言うと、玄徳は張飛に食事を勧める。 すると張飛はついいつもの癖で「酒をくれ。」と周りの者に頼む。 「それは出来ない。」 玄徳は笑ってそれを拒絶する。 「酒を飲ましてもらえば、貴様の手下になっても良いと思うかもしれない。」 今度は張飛が子供のような無邪気な笑顔で、冗談めかしくいう。 まるで虎が猫のようにじゃれてきているような様子である。 でも玄徳は少し気を許しつつある張飛に対して真顔で言う。 「よせ、酒を飲んで暴れれば貴様を切るかもしれないぞ。」 「がははっ。テメエのような非力者にたとえ酔っていたとしても俺を切れる訳がなかろう。」 「だったら、酒を飲んでいい気に眠ったら剣を突き刺してやろうか。」 冗談めかしていって居るが玄徳は全く笑っていない。むしろその目つきはちゃかす張飛をとがめるような色を帯びている。 「テメエ、やっぱり俺を殺そうと。」 (殺して何の得があるんだ。) 玄徳は口に出さなかったが、その言葉を受け流す。 「もし殺す事が出来なくても、腕一本ぐらいなら切り落とせるかもしれない。その手の腱を一本ぐらい傷付けることぐらいなら出来るかもしれない。 そうなったら、せっかく万を超える軍と渡り合える能力と技量があるのに、こんな事でその力のいくらかを失うことになったら、せっかくの力がもったいないとは自分で思わないのか。」 突然の声掛け。その時張飛はそんなことを考えたこともなく、言われたこともなく首をかしげる。
2008年07月14日(Mon)▲ページの先頭へ
猫の小道「命日」下編
「これって猫のブラシだよな。」
間違って鞄に入っていた物を取り出して、取り替えようと家に戻る。 その目の前を着飾った妻が出かけていく。 ☆☆☆ 「そういえば、今日は妻の初恋の人の命日か。」 事情が分かり頭では納得したが苛立った気持ちが頭をよぎる。 なくなってから月日がたっているのに、未だに妻に残る奴の残像が憎たらしく、同時に自分でない人間を大切にしている思いに裏切られたような気持ちがする。 「・・・なによ。木津ちゃん・・・怖い顔をして弁当食べていて。」 ぽんと背中を叩かれて、男はあわてる。しかもそれが先輩で違う部署に今は勤務している君津であることを知ると余計慌てる。 「どうしたの奥さんに逃げられたような男のような顔をして。」 意地悪く冗談のつもりで相手は言ったと思われるが、図星だったので思わず黙る。 とはいえ色々こいつを相手だと気まずいので席を外す。 「あっ逃げるんだ。そんなに初めてのキスの相手が怖いの」 「ぶっ。」 思わず吹き出す。 「なして、そんなことを言うんだ。昔の古傷をえぐるようなことを。」 普通そう言うことは黙っている物だし、昔の恋人なんて気まずいだけに決まっている。 「それなのに良く、そんなことを言えるよな。」 「良いじゃない。私にはそんなことも思い出なのだから。」 彼女はそう言って平然としている。 まぁ彼女は結婚していないから、そう言うことを言えるのかもしれない。一方の男の方は結婚しているからそう言うことを気にしてしまうのである。 (妻もそうなのだろうか。彼女にとってもあいつは思い出なんだろうか) 「なぁ、女はいつまでも昔の思い出を忘れられない物なのか。」 (俺は、こいつのことを必死に避けているのに。) それに対して、彼女は首を振る。 「昔の思いでは残念だけど時間が勝手に消し去っていく。 だから大切にしたい思い出だけは大切にしたいと思ってしまうものなのかも。」 そう言うと、女は男の弁当の中から卵焼きを一つつまみ口にする。 「でもだからといって、未練があるわけではないの。 貴方と分かれなくて結婚なんかしてたら上手くいくはずがなかったから。 だって、こんなにおいしい卵焼きを作ったり、貴方のそのシャツを毎日洗ったりなんか出来ないし。」 「確かに。」 こいつは顔に似合わず、整理が苦手でいい加減な性格をして、なにより仕事が大切な女である。あまり主婦のイメージなんかない。 「結局、結局永遠の愛と言うけれど…… 思い出なら好き勝手で良いのかもしれないけれど、永遠に一緒にいると言うことは結局現実なの。現実の中でお互いが必死になって家庭を作っていくしかないと思うの。」 だから。そう言って立ち上がり、卵焼きをもう一つつまみ立ち上がる。 「だからこんなおいしい卵焼きをつくる奥さんを大事にしなさい。 多少気にくわないところがあったとしても、お互いに現実を作っていく気持ちがないと成立しないわけだし、今ある現実は一体何出てきているのか。 色々あるのかもしれないけれど、結局お互いが一番に思うからこそ今があることを忘れないで。」
2008年07月13日(Sun)▲ページの先頭へ
真三國志関羽編−15−
その数の多さに、ある一つの結論に結びつく。
「玄徳の野郎。油断させている間に手の者を使って数で俺様を殺そうとしやがって。」 そう苛立ちながら、突然草むらから襲いかかった人影を交わすと、矛で刺し貫こうとして、あわてて止める。 「お前は俺の手下の一人。玄徳の手下から俺様を助けてくれるとは見事な忠誠心」 と言いかけてあわてて、そいつの二撃目をよける。更に息をつく暇もなく、後ろから竹槍が襲ってくる。 あわてて張飛はよけたが、腕をかすったせいか服の下から血がにじみ出る。 「テメエら。俺の手下だろ、何故玄徳を襲わず俺を襲うのだ。さては玄徳にお前ら買収されたのか。」 「うるせぇ、そんなの関係ねー。胸を押さえてテメエが俺達にどんなことをしたのか考えてみろ。」 そう彼らが叫ぶので、張飛はあわてて胸を押さえ考えるが思い当たる節がない。 「裏切りは、男として恥ずかしくないのか。俺はお前らに恨まれることはない。」 彼は断言して不思議そうな顔をする。だけど、関羽にとって見れば彼らが怒るのは別段不思議ではない。酒を飲んで暴れては人を殴ったりすることを楽しんでいる男である。そんな奴に彼らはただ張飛への恐怖のあまり従っていただけである。 その恐怖が玄徳に軽くあしらわれたことで壊れた。そのチャンスを突いて積年の恨みを晴らしたいし、それ以上に従い続けていればいつぶん殴られて殺されるか分からないからその恐怖を取り除きたかったのである。 「テメエのような酒乱野郎に従っていれば俺達の命がどうなるか分かったもんじゃねえ。いつも叫ぶので飲んで意味もなく俺達を殴ったり鞭でうちつけたりしやがって。 殺される前にぶっ殺してやるだけだ。」 そう言って襲いかかった瞬間 「待て。」 と短く叫んで玄徳が彼らとの間に立つ。 「何だこの耳デカ野郎。」 張飛達の手下は殺意で気が立っており、言ってはいけない言葉を口にする。 一瞬玄徳は不愉快そうな顔をしたが、すぐにいつもの丁寧な口調で彼らに言う。 「なぁそう言う心配はもっともかもしれないが、彼はこの後10万の兵を向かい打つような大将になる男だから、勘弁して見逃してもらえないだろうか。」 「うるせいっ、敵の施しなど受けん。こんな雑魚など俺様なら一蹴してやる。余計な口出しをするな。」 助けられる形になってしまった張飛は思わず玄徳に抗議する。 確かに彼の言うとおり張飛が彼らに囲まれたとしても殺されるとは玄徳は思っていない。 「とはいえ、降りかかる火の粉と言え多くの者を傷つけるようなことがあれば州の役人達もほっておいてはおかぬだろう。 お前は一軍の将として大軍を迎え撃てるだけの力を持つ豪傑だ。 つまらないことは気にするな。得な方を取れ。 君たちもこいつを殺せたとしても、何人の仲間が死に傷つくのか分かったものではない。無理をするよりもそれよりは私にここは任せた方が得だと思うよ。 今までのようにお前達を傷付けたりしないことを約束しよう。」 「うるせいっ」 一度殺すと腹をくくったせいか、張飛の手下達はかなり気が荒く説得など、聞く様子もない。もとより玄徳もこれほど冷静さを失っている双方に説得が通じるとは実際は思っていなかった。 無理矢理、張飛の体を抱き起こすとにらみ合っている彼らを前に強引に馬に乗せる。 「約束は守る。だから失礼する。」 そう玄徳は短く良い、張飛を乗せたまま駆ける。 手下達は所詮手下なので馬に乗る者だと居るはずもなく、呆然と立ち去る玄徳らを見送るしかなかった。
2008年07月12日(Sat)▲ページの先頭へ
猫の小道「命日」上編
その日は普段と特に変わらない一日の筈だった。
君は僕に餌をあげると、何気ない顔でいつものようにご主人を送り出した。 「さて」 そう言うと彼女は服を着替え始めた。 結婚してから主人の趣味なのか黒とか、白とかそう言う落ち着いた色の服を着ていた彼女だが今日に限っては桃色の可愛い服を着た。 そしてピンクの口紅を付けながらいつもの彼女とは違うように、少し前に流行った鼻歌を口ずさみ、そして家から僕を追い出すと、白いマーチで出て行った。 ☆☆☆ 真っ青な空に浮かぶ雲のように、白いマーチは高台へと上っていった。 そして、真っ青な湖の見える墓地でその車は止まった。 「ふう。」 ため息を一つ付いて意を決して高台の墓地の更に上の方にあるお墓へ上っていく。あまりそう言うところを歩くには向かないハイヒールで一年に一度しかはかないような靴で、一年に一度しかはかない服で上っていくのは意外に難儀なことだった。 「さて、」 そう言うと、ポケットからたばこを取り出し口に挟み、息を吸うようにしながら火を付けた。 そしてそれを線香の代わりにお墓に立てて、手を合わせる。 「絢ちゃん。来たの。」 そんな声が背中の方からかかる。振り向くと性別は違うと言え、あの人が立っているような……そんな雰囲気を持つそんな女性が立っていた。 「こんばんわ。」 「絢ちゃん。来てくれてありがとう。 でも貴方はもう結婚したのだから、無理にここに着ない方が良いわよ。 旦那さんの木津さんにも悪いし。」 拒絶すると言うよりは、諭すように女性はほほえむ。その笑顔の口元に去年なかったしわがあり、目元もどこか元気なく、この一年でめっきり年を取った感じがした。 「こういうことを言うのも変だけど。すごく何も見えなくなるぐらい息子のことを好きだったから分かるけれど、でもいつまでも死んだ人間を思い続けることは、旦那さんが居るとか居ないとかにかかわらず良くないわよ。 貴方は欠かさず命日に来てくれるのはうれしいけれど、もう彼の友人達も親戚も貴方のように毎年来る人間なんか居ないのだし。」 そしてもう一度言う 「だから、死んだ人の事はもう忘れてしまいなさい。こんな所を貴方の旦那さんが見たらいい気もしないだろうしね。貴方にとって木津さんが一番大切だから。」 「私にとっては死んだあの人よりも、木津が一番大事です。」 黙っていた彼女は、きっぱりとその女性に言った。 「私は、私を愛してくれる木津を愛しています。364日間は彼のことだけを考えて生きています。 でも一年に一日だけは死んだあの人のことを思ってはいけませんか。」 「だって、あの人は君でない好きな人のために死んだのだから。一番好きな人じゃないのだから……」 女性はそう言いかけて、止める。その現実に一番辛いのはあれだけ彼のことを愛した絢自身であり、かなり痛い言葉であるはずだから。 でも彼女は笑顔で、痛みも悲しみもない様子だった。むしろそう言う物を超えてしまったかのような穏やかな悟りきった表情であった。 「それは知っています。もしかしたら私が今1年に1日だけ思っていても、向こうは全く好きでないかもしれないことも。」 「絢ちゃん」 「おばさま。人の愛情って本当にすべてを好きになる言うことがあるのでしょうか。私はそうであるとは思わない。木津だって100%私を愛することなんかあり得ないと思います。人は誰しも欠点とか嫌な部分はあるのだから。」 その時もう一度絢は確認する。死んだあの人に愛情とそれとあるいは同じぐらい嫉妬と憎しみがあったことを。 「だからこそ、誰かを愛すると言うことはお互いに努力したり、嫌な部分を受け入れたり我慢したり、優しくしあったりしないと成立しない。」 所詮は恋人であったり、夫婦であったりしても、自分ではないから。 「だから木津のために木津だけをほとんど考えて私は生きて居る。 私が、一年に一日だけあの人を思うのも結局は1%にも満たない気持ちにすぎないんです。」 そう言うと彼女は彼の墓前で手を合わせる。同時に木津に対しても心の中で手を合わせる。 (だから、貴方は自分のことを忘れろと言うけれど、一年に一度だけは貴方のことを思うことを許してください。) (私という人間の何分一かを作ったのは紛れもなくあの人だから、一年に一度だけはその部分を捨てられないから、許してください。)
2008年07月11日(Fri)▲ページの先頭へ
棘
私に残った物は
突き刺さった言葉の棘 ずっと痛みを感じながら 抜き取る勇気も 抜き取る方法もなくて 傷が癒えたとしても いつまでも置きみやげのように 心の中にとどまり続ける あの時だったら簡単に抜けたのに って、見る度に痛みが走る度に 後悔をして でも、時が経って余計抜けなくなって 真っ赤に焼けた針でしか 突き刺すような痛みでしか この棘は抜き取れず このまま貴方への痛みが ずっと残って苦しまないと いけないのでしょうか?
2008年07月10日(Thu)▲ページの先頭へ
猫の散歩道−歌姫−
「おいで真琴」
そう彼女は僕を呼び頭をなでる。 真琴という名は彼女が言うにはとある小説に出てくる香港の「歌姫」の名前らしい。 他ではゴンゾーとか、けむんぱすなど呼ばれていることを考えれば、性別は間違っているが、それ程悪くない名前なのだろう。 彼女は、僕という猫に餌をくれる人の一人だ。 出会いはとある地方都市の駅で路上ライブをやっている時、客が居ないときに僕を見つけチーズをくれたのが出会いだ。 その彼女は不機嫌そうだった。彼氏が居て仲良くやっているようでずっとこの所機嫌が良かったのだが、最近「彼は大人でずっと私よりもしっかりしている」とか「やさしくしてくれる」とかほめてばかり居るのに、その割にだんだん暗くなってきている。 というか暗くなっていくと言うよりも、些細なことで感情的になったり、落ち着かなかったり・・・何かに怯えているような感じがした。 携帯がなると決まって最近は怖い顔になる 「幸之助っ。怒っていないよ。私がわがままなのは分かっている。でも、ちょっと」 何事か話していたが彼女は力もなくうつろな感じで返事をするばかりであった。 そして電話を切る。 「分かっているのよ。このままじゃ駄目だって言うことぐらい。音楽でご飯を食べていく事が大変なのはコウちゃんの方が良く分かっていることも。」 そういいながら、彼女は今時珍しいカセットデッキを再生させる。 アコーステックの音楽が静かな部屋の中で流れていく。 心地よい音楽の中、彼女は僕の体を抱く。 「この音楽はコウちゃんと最初に会ったときに弾いてくれた音楽。 すごくギターが上手でとても心地よくていつまでも聞きたいって思った。」 この音楽を聴いてから余計音楽にのめり込んだ。 だからこそ「せっかくの仕事のチャンスだし、結婚が近いからもっと二人の時間を増やしてほしい」と言われた時、裏切られた気がした。 「でもコウちゃんの方が年上だし、絶対正しいんだよね。」 −だって、私よりもずっと上手なコウちゃんでさえプロになれなかったのだから。諦めなければならなかったのだから。 同じ道を歩いてきたから、なにより世界で一番私のことが好きだからこそ、敢えて心配して大事にしているから、そう言ったのに。 誰より私が貴方の優しさを知っていなければいけないから、貴方の言葉を大切にしなければならないのに。 「なのにどうして涙が落ちてくるの。」 僕は彼女の腕の中からぴょんと飛び出すと、部屋の片隅においてあるギターのそばで丸くなる。 「そうか、真琴は私のギターの音を聞くと気持ちよさそうに眠るんだよね。」 何かを吹っ切ったように一つ息を吐き捨てて、彼女は弾く。 僕は猫だから、音楽のことは分からない。 まして猫だから彼女を勇気づけることも、彼のように猫の僕の人生よりも長い彼女の人生を思い考えてあげることも助けることも出来はしない。 でも許されるのなら彼女のギターを聞いていたかった。 こんな風にずっと彼女のギターを聞いて眠っていたかったんだ。 FIN 連載「猫の散歩道」 とある地方都市の猫の見つめた風景 あるいは猫の居る風景 ショートストーリーまたは駄文 掲載中 一話完結型なので、それぞれ独立した話です。
2008年07月09日(Wed)▲ページの先頭へ
真三國志関羽編−14−
だから敢えて相手の間合いにまで張飛は仕掛けない。
玄徳はまっすぐに剣を振り下ろす。 お互い手綱をもって戦う分片手で剣を振るうが、長い矛に比べて剣の方が支点が短い分、玄徳の方が有利であるが、張飛の方が圧倒的に握力が強い。 あっさりと玄徳の剣を矛ではじき飛ばすと利き腕を狙う。 だが、その手綱を持つ利き手が張飛の視線から消える、 (手綱を放した?) 次の瞬間、思いもしないところから剣が落ちてくる。 「くっ」 何とか野性的な運動神経でそれを視界にとらえとっさに矛で体をかばう。 (手を手綱から放して、二刀流で剣を振りかざしたのか。) 一瞬の驚愕で防御が遅れ、その分バランスを崩し馬から落ちる。 「くそっ」 地面にたたきつけられた痛みで胸を強くたたきつけられ息が詰まり涙が出る。それに対して手綱を放した玄徳はそのまま右左の両手でそれぞれ剣を手に構えている。 落馬した張飛と対照的である。 「かっ・・・・」 「勘弁ならないか。」 関羽は張飛の悔しさを代弁したかのようだが、その瞬間張飛は素の状態で玄徳の並はずれた馬術に心ひかれていた。 (かっちょいいっ) 張飛は根が単純なのである。 とはいえそれで負けを潔く認められるほど人間は出来ていない。 「負けるもんか」 そう思いながら、がむしゃらに玄徳の所へ徒歩で襲いかかろうとする。 その刹那脚に火箸を付けられたような熱さを感じ痛みを感じる。 「なんだ。」 もう一度転び、あわて手足を見る。脚から鮮血が流れる。 「畜生。」 叫びながら立ち上がろうとする最中、自分を囲むように人のうごめく気配がする。
2008年07月08日(Tue)▲ページの先頭へ
真三國志関羽編−13−
「劉備という奴の馬があれだけ走るのが分かった以上、このままだと相手が絶対有利だ」
よく考えれば玄徳の馬は多分支援者の張の用意した馬だ。張はこの辺の幽州一帯の馬を預かっている商人だから。 (多分玄徳の乗る馬は売り物の中で特に選りすぐりの良い馬だ。) 少し言うことを聞かないだけで良い馬でも「肉にして売っちまうぞ」と言うような張飛に良い馬が手にはいるわけはなく、すこし考えただけで馬の優劣の差ははっきりしている。 玄徳が戻って来たところで関羽は彼に言う。 「玄徳殿、馬を変えてもらえぬか。このままでは私達が不利だ。」 「……??馬は乗り慣れた物が良いと思うが。」 そうは思ったものの玄徳は執着することなく馬を下りて手綱を張飛に渡す。 「お前の馬を貸せ。」 代わりに手下の中で一番調教が済んでいない気性の悪い部下の馬を彼が乗るように張飛は指示をする。 「なるほど良い馬だな。」 与えられた馬は骨量が大きく馬格がしっかりしていて前足も普通の馬よりも太い。 あれだけ走るのも納得いく気持ちで張飛はその馬にまたがった。 しかしその瞬間白目がぎょろっと敵意を込めて彼を見つめた瞬間、叫び声のようないななきをあげて立ち上がろうとする。 「こら。やめろよせ。」 張飛は何とか首にしがみつき振り落とされないように耐える。同時に馬の首をきつく腕で締めて力づくで馬を押さえようとする。 一行の玄徳の方の馬はそれ以上に暴れたが何事かもないようにバウンドする馬の体に合わせてタイミングを取りながらされるに任せていたが、逆に馬の方がすぐに疲れて大人しくなる。 「いいうまやなぁ。」 気に入ったように玄徳は感嘆の声を上げる。 (どこがや。) 乗せられている馬も気性が悪く決して良い馬とは言えない。それなのに玄徳は楽しそうに乗りこなしている。一方張飛が今乗る馬は気性が良くないことももちろんだがパワーがある分、余計難しいと思われる。腕力が強いから張飛は何とか乗っていられるが、そんな馬を玄徳はあれだけ素早く乗りこなしているのである。 「こら大人しくしろよ。あの腕力で頭殴られたら殺されるぞ」 そう言って、玄徳は先ほどまで乗っていた馬に近づき首筋を強く叩いてコンタクトを取る。それで何とか馬は玄徳の命令で落ち着いて、それなりに乗れる状態になる。 「……やっぱり乗りこなした馬がいいでしょ。」 そう哀れみの込めた目で見つめながら張飛に忠告する。 (畜生。馬鹿にしやがって。) そう思いながら、一瞬だけそうしてくれたらうれしいと本音が漏れそうなのを思いとどまり、拒絶する。 「断る。」 (なになに。気性が多少悪い所を見せただけで、玄徳が居れば馬は落ち着くらしいから……逆に乗りこなしてしまえば、こっちらの馬の方が素早さも力も上だ。) 相手の方が馬を上手に乗れることは認めざる負えないが、別に玄徳とかけっこをするつもりではないのである。 「お互い目的地までの早さを競うわけではなく、お互いが獲物を振るい勝った方に従うと言うことでいいよな。」 「・・・・」 嫌だとは言わないが、玄徳は面倒くさそうな顔をする。 「今は力の時代ではなく、馬の時代と言い切ったんだ。当然力には屈しないと言うことなんだろう。」 張飛は勝手に決めつけると、早くも一騎打ちをするために間合いを取ると、玄徳が馬の快速を使ってさっきのように消えてしまう前に、突進する。 「いきなりかよ。」 玄徳はそう叫ぶと腰にある二振りの剣の内少し長めの一本を抜きあわてて彼の突進に身構える。 それに対して張飛の獲物は蛇矛。長さでは圧倒的に有利である。 (ただ勝つのはつまらない。自分の馬術をひけらかす野郎を馬から突き落としたいなぁ。) それと生意気そうな玄徳(と言っても玄徳の方が年長であり、自分がいくら薄汚い髭面の所為で老けて見えてもそんなことを言われる筋合いはないのである。)であっても、仲間は一人でも多い方が良いし、男と男の勝負(と張飛は勝手にそう思い大義名分化している)とはいえ殺したら面倒になりそうなので、一刺しするよりもむしろ (俺様の日頃の豪放な性格からおおざっぱな性格のように思われているが武術に対しては、遙かに技術は上であり、繊細だから。) 相手が剣を振り下ろしたらそれを矛で迎え撃つと、片手で持っている手綱の手に隙が生まれる。そこを狙えば相手も両手を放せばさすがにあんな気性の良くない馬だから落ちてしまうので放すことは出来ないだろう。 手綱を持ったまま手を切り落としてしまえばさすがに言うことを聞かないといけないだろう。 そう思い激突の瞬間、玄徳の攻撃を敢えて張飛は待つ。
2008年07月07日(Mon)▲ページの先頭へ
お知らせ
本日のソルノチェセルは過労により休載します。
明日は真三国志の掲載予定です。
2008年07月06日(Sun)▲ページの先頭へ
ニアミス。
長い病院の廊下・・・
すれ違う貴方は先生で、私はただの患者。 たけど私はここで貴方に通り過ぎる度に、心臓が痛くなる程ドキドキする。 貴方にとってそれは一瞬だけど、私にとって貴方の全て・・・ 優しい声、優しい瞳、優しい指・・・そして意志のはっきりした心。 全てを思い出してしまう・・・そんな一杯の時間。 貴方にとってそれは些細な事かもしれないけれど、 貴方にとって私は、通り過ぎる一人の患者に過ぎないけれど、 私にとって貴方は一杯になる程好きだった。 貴方に好きな人が居る事走っていたけど、ブレーキに何かならなかった。 好き過ぎて、貴方の心も体も・・・ そして未来も、憎しみも、命も全部、全部私は欲しかった。 その日私はナイフを持って長い廊下で、 貴方と出会える確信を持って、 貴方を奪う気持ちで廊下を歩く。 貴方が私の所に近付いてくる。 知っている。貴方がみんなに尊敬されるお医者さんである事私はとても嬉しくて、 同時に貴方が誰かに笑う事・・・とても辛かった事。嫉妬していた事 それは貴方にとってそれは些細な事だと思うけど・・・ 私にとって貴方の些細がとても大きかった。 だから・・・ 通り過ぎた瞬間。私はナイフを突き刺した。 「優美ちゃん久しぶりだね。足直ったの・・・良かったね。」 「・・・先生ありがとうございました。」 いつものように何事もなかったかのように装い、 私達はお互いの進むべき所へ別れていく。 「ドラマみたいに・・・ いくら好きでも・・・・先生を刺せる訳ないじゃん。」 私は自分を馬鹿にして笑う。 「刹那だったけど先生に出会える、この廊下が好きだったんだよ。」 一瞬だけど、出会える瞬間。声の聞こえる瞬間大好きだった。 先生の優しい声、優しい瞳、優しい指、大好きすぎて、壊せるはずがない。 誰も居ないのを確認すると中庭の池に汚れのないナイフを投げ捨てる。 あの瞬間痛かったのは私の心。 先生の変わりにナイフを心に突き刺した。 先生の幸せなら、私は心でなく体にでもナイフは刺せるよ。 先生は気が付いてくれなくても良い・・・ でもナイフを刺してもこの想いは本当は殺せないから。 それって不毛な片思いかもしれないけれど・・・ イケナイ気持ちかもしれないけれど、 私の恋愛。
2008年07月05日(Sat)▲ページの先頭へ
井戸
悲しみの雨を
溜めている訳じゃなくて 思いが絶えず わき上がるの 深いところで 心の潤いは貴方と繋がっていているから 思いは耐えることがないの だから 深いところまで手を伸ばして 私の思いをくみ取って わき出す愛を 引き上げて 貴方の口を 私の心で潤して
2008年07月04日(Fri)▲ページの先頭へ
真三國志関羽編−12−
それに張飛は絶対そうは見えないのだが、良いとこのお坊ちゃんである。
小さい頃から親に馬も与えられたし、肉屋の商売で物を運んだりするときに馬も使う。 あと働きが悪いと、食べたりするほど (馬とは友達なのだ。) 「だから道楽で馬乗っている奴とは分けがちがう。」 大体馬が上手く乗れるからと行って、張飛の豪腕があれば力づくで馬から突き落とす事が出来るのである。 「たとえ馬に乗っていても俺様に貴様のようなひょろひょろした奴が勝てるわけがない。」 「じゃあ参る。」 自信満々に張飛が答えると、しめたとばかりに玄徳は馬に拍車を入れる。 「さあこいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいっ」 と叫びながら玄徳は馬を駆け、張飛と関羽の許から消えていく。 「・・・・疾いっ」 玄徳が走り出した瞬間馬は翼を持ったように足場の悪い草原を駆け抜けて行った。 あれだけ馬を速く走らせる男を騎馬民族の出身の関羽も見たことがない。 (恐るべきっ、玄徳。) 「っていうか、戦う相手が逃げちゃったけど、どうするんだよ。」 張飛の言うとおり感心している場合ではないのである。 取り残された二人には笑いが落ちなかったような微妙な空気が流れる。 半時ほどして蹄の音が近付いてくる。 「玄徳。逃げ切れぬと思って戻ってきたか。」 張飛がやっと獲物が戻ってきたことに安堵した……が 「通り過ぎてどうするんだよ。」 また颯爽と玄徳は通り過ぎていく。 「なんて楽しそうに馬を乗るんだ。」 強敵を相手にしているのに相手は全く気負っていない事に関羽は驚きを持つとともに、気負いこそが体を硬くして自らの動きを奪うことを考えたら、その余裕こそ本当は恐ろしい物だと関羽は思い考えさせられる。 「っていうか、兄者そんなこと言っているから、次回に対決が持ち越しになってしまっただろ」
2008年07月03日(Thu)▲ページの先頭へ
真三國志関羽編−11−
「口ばっかりの政府が一体何が出来るというのだ。
この世を制するのは圧倒的な力。すべての人をひれ伏せるだけの力こそ必要だ。 俺様を何人も従わせることなど出来ない。逆に俺の力ならどんな奴でも1対1なら負けるわけがない。ひれ伏せることが出来る。」 張飛はそう言い切り染めた力を誇示するように大声で叫ぶ。 張飛の手下達はその声だけでびびりそうだった。 「同感だ。」 玄徳はそう言ってうなずく。 「張飛とやら、貴方が言うとおり口だけの者や、保身や目先の利益をつかむだけで、礼節を説き、こざかしい策を巡らせる者に、人を率いて従わせることなど本当は出来はしない。 痛みが分からないものに誰が必死になり戦おうとするというのか。」 でも彼の答えは少し違っていた。 「でも貴方は一人の力でひれ伏せると言ったが、たった一人では一人を従わせることは出来ても、すべてを統じる事はできない。 一人ですべてを力づくで従わせようとする事はとても骨が折れることだ。」 玄徳はそんな面倒がとてもやっかいそうに苦笑いをすると、馬のたてがみをつかみ軽やかにその背中にまたがる。 「張飛・・・・貴方は馬は得意か。」 「……」 「董卓に、公孫讃…… これからの戦いは、馬の戦いになる。 一人の武勇ではなく、いかに人を動かすか組織的に動かすせるかが勝負になる。 そうだよな、関羽殿。」 突然フラれて関羽は戸惑う。 「国を豊にとする者は多くても現実として、税から人は逃げていくし、兵力を持つ輩が根こそぎ持って行く。 また知略も時に必要だが、策だけを要する者は信用されず、小賢しい駆け引きは本当の将や結束の敵軍に対しては現実には決定的にはなりづらいし。」 「……」 難しくて分からないが、自分の言うことを認められた感じが張飛にはほんの少しだけした。だが、同時に彼の中に「本当は自分の言うことなど人は馬鹿にしている。」という思いがどこかに大きく存在して、玄徳に対しての憤りに近い何かはどんどんふくらんでいく感じがした。 (よく考えろ翼徳。馬が得意か、と言う問いかけはこの耳でか男は本当は俺様が馬など乗れないと馬鹿にしているのかもしれない。 いやきっとあんな風に穏やかで高貴ぶっている男の仮面の下は絶対、力で生きている人間を馬鹿にしているに決まっている。) 現に張飛の力で言うことを聞く手下も、実際裏で聞くと「筋肉馬鹿」と馬鹿にしている輩ばっかりである。そしてそう言うのは頭の良い奴ほど多いような気がする。 (玄徳という男、廬植とかなんとかいう偉い先生に勉強を教わったような輩だ。俺様の言うことなど、学もない輩と心の中で馬鹿にしているのであろう。) (馬鹿にされてたまるか。)
2008年07月02日(Wed)▲ページの先頭へ
真三國志関羽編−10−
「俺様はこの動乱を鎮めるために兵を挙げる。だから、俺様のために力を貸せ。人々を救うためだ。嫌とは言わせないぞ。」
それに対して玄徳は少し迷惑そうな顔をする。 (そりゃそうだ。正義のためと言うことと、髭男の家来になるのとは全く関係ない話だから。) 関羽は説得とも言えない張飛の高圧的な脅しをあきれながら聞いている。 しかし玄徳はまじめな顔をして言う。 「すまんっ。この馬ちょっとびっくりしているから、もう少し小さい声でお願いできないか。」 そう言いながら小刻みに手綱を動かしながら馬を落ち着かせようとしている。 器量が大きいのか、あるいは何も考えていないのか張飛の声の大きさや、力強さについても全く動じた様子はなく、その言葉も軽くあしらうようだった。 「貴様。漢が真剣に説いているのにその態度はなんだ。ぶっ殺すぞ。」 張飛は矛を玄徳に突きつける。 でも玄徳は何も言わずに馬を下りると、同じ目線に立ってから逆に問いかける。 「私に貴方の部下になれと言うことか。」 直線的に聞かれて、少し対面的な恥ずかしさを彼は持ったが、同時に話し合いというのは元々彼の性分に合わないらしく、面倒くさい説得をしなくて良いと言うの事が彼にとってはうれしくすぐに「そうだ。」と言い切る。 「だったら・・・・貴方に問う。私の主になりたいというのなら、将として今の時代何が必要と貴方なら思うのか。」 「貴様は、どうせ腐れ儒士のように、やれ礼節だの、政治力だの、知謀だといいたのだろ。」 (いつも頭の良い奴らはそんなことをいいやがる。) 張飛は説得だの、演説など、そう言うのが大嫌いというのは結局そう言う奴らが、学問を鼻にかけて張飛のような豪傑を巧みに言いくるめ馬鹿にしてくるのがどうしても嫌だった。 ああいう輩が口先だけで勝利して馬鹿にしたりするのが、そいつらが政治を取り仕切り、軍を率いて、その結果がどうなのか。 ちっとも民は豊かにならないし、犯罪は消えない。いくらそんな輩が知恵を誇ったところで、黄巾党に対してまるで歯が立っていないのである。 「それなのに、人のことを馬鹿にしやがって。」 テメエもそんな輩か。と完全に目が据わった様子で吐き捨てる。 どうやら感情の高ぶりで直前まで飲んでいた酒が回っているらしく、手に負えない状況になりつつあるらしい。 一方玄徳も同感な部分があるらしく、笑っていたがさっきのような無関心な愛想笑いから、少しだけ優しい笑顔に変わる。 (この男の言うように。理屈や理想だけを振り回して、他人の痛みを考えようとせずに、義務や強制だけを押しつける輩がこの世界を駄目にした。) と玄徳は思っている。だからこそ一族の有力者がせっかく出資してくれたのにもかかわらず、彼自身学問が好きになれなかったのである。 (ちなみに「だから、やる気はあったけれど、勉強をする気持ちになれなかったのは、そう言う腐った知識人達が居たからだ」と思いこんでいるが、実際はそんな輩を無視して知識を深めればいいのであって、単に遊び好きの自分自身の怠惰をちゃっかり人の所為にしていたりする。)
2008年07月01日(Tue)▲ページの先頭へ
カルタ
名前の頭文字を呼ばれただけで
思わず身が反応する 人よりも居場所を見つけようと 必死になっている 平手で叩かれて 本当に間違いじゃないの 言葉だけじゃだめなの 見つけて それは一組の物だから 言うだけじゃなくて 言葉に合う 絵を捜して 好きという言葉や思いだけじゃなく 形にして
2008年06月30日(Mon)▲ページの先頭へ
月姫抄10
そう思ったからこそ、道理を説いてそれを封じる。
「されど、今は主が遠くで戦場にいる最中に戦勝の神事でなき場所にて踊るのは、不謹慎でござりましょう。 お誘いはうれしいのですがそのようなことをされては後日主殿に『病なのに舞を見る余裕があるのなら、戦に赴かれればよかろう』とお父上に申されることでございましょう。」 (だから辞めた方がイイですよ。) と、逃げるように維盛に背を向き立ち去ろうとする。 「あいやっまたれぃ」 そうしようとした月姫に対して大きな声が突然掛けられる。維盛は何回も誘いを掛けられるが(←ことごとく玉砕)そんな形で、呼び止められたことはない。振り向けばあの小柄で貧相で禿げネズミのような維盛の従者が前に進み出る。 (びっくりした。) 綺麗物好きの維盛殿にしてはどえらく百姓じみた薄汚い下品な感じがする男を側に置くと思ってはいたが、声は大きく、小柄な体にもかかわらず立ち振る舞いは立派で大きく見える。なにより絶えず笑顔を海の波のように讃え続け、月姫が目を向けても目は猫のように細めても堂々と温かくそれを受け止めている。 はっきり言って、この従者の方が維盛よりも度量が大きく、下手をすればこっちの貧相な男の方がよっぽど月姫には主に見えてしまう。 (家中にこのような物が居たのか?) 「どこの者じゃ。」 静かな、でも押し殺したような声で直接従者へ月姫は問いかける。 凛として綺麗な声でありながら、言われた男にとっては刃物を突き立てるような、一瞬の隙もない言葉に聞こえる。 だが男は、人を食ったように微笑み続け甘んじてその刃と向かい合う。 まるでどんな刃を振りかざしても、倒れぬと言わんばかりに堂々としていて。 そんな二人の心の刃の斬り合いをぼんやり見ていた維盛は慌てて助け船を出す。 「月姫、この者は我らと商いのある京の茶屋宗永殿が日頃のお礼に小者を一人使っていただくようよこして。 月姫どのには周りにはお付きの巫女は居ますが身辺を守る男手が居ない上、是非にこの者をおそばにお使いいただきたい。と」 「この男をか?」 そう言われても、護ってくれるはずの男の方がスケベそうな笑みを隠すことなく陽気に浮かべており、却って月姫には身の危険を感じる。
2008年06月29日(Sun)▲ページの先頭へ
真三國志関羽編−9−
そんな玄徳から戻ってすぐに「会ってもいい」との旨が便りに来る。
しかも行き会うところはとある草原である。 人の多いところならもめ事になったら大変であったが、野生の虎のような張飛にとっては、そういう広々とした場所は暴れるのには最適な場所だ。 「傭兵を取り仕切る男としては、いかにも不用心な事だ」 関羽はそう思ったが、そうならこっちには都合が良いと言えた。 張飛ぐらいの腕前なら、関羽以外にかなう者が居るとは思えない。後は玄徳が張飛の迫力にびびって逃げ出してしまうことが一番心配であった。 「それなら俺の手下を草むらに潜ませて取り囲めばよい。」 張飛はそう言うが、相手の方が手勢は多くそう上手くいくとは思えない。 ところが玄徳は待ち合わせの場所へ部下達を連れてこず、わずかな供の者数名を連れてきただけであった。こっちが無理矢理にも従わせそうと思っていることを相手は露とも知らない様子である。 (何か策があるのか) 兵法に通じるだけに用心して関羽がつぶやくが張飛はそれを否定した。むしろ奴の姿を見て安心したようだった。 「あいつは、単なる腰抜けだ。勇気などない。」 張飛は玄徳を見て驚いたが、怖かったりびびった訳ではなく、以前会った人間だったからだ。 (あいつは、義勇軍の立て札を見てため息をついていた耳デカ男。 あんな奴でも傭兵の軍団長になれるのなら、俺ならいくらでも出世が出来るはず。あんな奴なら従わせるのは何でもないはず) そう思い得意の大声の口上でびびらせる。
2008年06月28日(Sat)▲ページの先頭へ
真三國志関羽編−8−
証言1黄巾党の将校
「玄徳、彼は天下一の侠客だ。」 −侠客ですか? 「ああこの辺位置の不良少年だよ。 まあ、もう少年という歳ではないから不良青年と言うところか。 まあ中年でも少年隊とかいるだろう。」 −そんな人は知りません。 「とにかく良い奴だよ。あいつの悪口を言う奴はゆるさんよ。」 注※証言者の希望により音声を変えてあります。 証言2友人 注※有名人のため、目線で隠してあります。 「あいつは勉強もせずに馬とか衣装とかに凝っていて、とにかくいつも遊びまくっていやがって。うらやましいというか、もといっそんな事をしていて廬植門下として恥ずかしくないか。」 −頭が良いというか、軍略に優れている人格者というわけではないのですね。 「そんな分けないだろ。学校での成績もかなり悪かった方だよ。 悪知恵が働くように思われているが、本人は不良で好き勝手にやっているだけだよ。 それにあいつは無礼だろ。先輩に向かって器量が小さいとか、白い色がおれ様は好きなんだけど『自分の女の下着も白にしろ』とか女に言っているだろうとか、失礼なこと言いやがってあいつは白馬将軍と言われた俺様をちっとも尊敬しなんで」 −貴方は公孫讃?ですか。 「ああそうだよ、自分の女には下着は白にしろと言っているよ。純白を男は清楚の象徴と思うのは当然じゃないか。白こそ男の浪漫だろ。」 証言3部下 「玄徳様は尊敬できる上司だよ。普段は物静かだけど、色々丁寧に俺達の言い分も良く聞いてくれるし。怒ったり怒鳴ったりしなくて、結構色々自由に任せてくれるから、仕事はやりやすいよ。」 −武芸とかはどうですか。用心棒を取り仕切るには腕っ節が強くなければいけないし。 「武芸ですか?刃物見るだけでびびって居るし、意外に努力とか嫌いそうであんまり本人は得意ではないようですよ。 むしろ馬を乗るのが好きならしく、安い馬や癖馬をよく走らせて馬商人の手下からもそう言う面では一目置かれているようですが。」 (要するに、武勇に優れているわけではなければ、兵略に優れているわけでもないのか。) そんな事で傭兵達を束ねられるのか、関羽は心細く思う。 同時に張飛は腕に物を言わせて玄徳を従わせようとしているが、物静かであまり武芸には興味のない彼が、そんな張飛の呼び出しに応じるとはとても思えない。
2008年06月27日(Fri)▲ページの先頭へ
耳鳴り
あの言葉が耳に残る
もう居ないのに、いつまでも心に残り 涙があふれる 怒られた言葉が耳に残り 臆病で、自信がなく、逃げようとする 私が居る 終わったのに 振り返り、その姿を捜してしまう きっと耳鳴りなのに 「好きだよ」ともう一度 懐かしい言葉を探してしまう
2008年06月26日(Thu)▲ページの先頭へ
真三國志関羽編−7−
しかし本人は小突いたつもりでも、酔っぱらっている人間は加減という物を知らない。
ただでさえ力が強いことを本人は忘れている。 兵士はぐったりしたまま動かない。 「おい大丈夫か。」 (たださえ仲間が少ないのに自分で減らしてどうするんだよ) 関羽はとんでもない彼の言動に正直止める気にもならない。 「大体呼んできてどうするつもりなんだよ。どうせ、せっと」 「それは・・・・説得するのに決まっているだろ。」 そう言いながら張飛は指を鳴らしている。 (だから殴って言うことを聞かすのが説得というのかよ。) 「とりあえずだな。俺は正義のため黄巾党の奴らをぶっつぶすので、俺様の手下となってボロぞうきんのように働け。正義のための戦を拒むことは許されないぞ・・・・と兄貴、文を書いてくれ。頼む。」 (こう見えていいとこの坊ちゃんで字ぐらい習ったのだから、自分で書けよ。) 仕方なく関羽はその言葉を丁寧に・・・・でも自尊心が強いからどう見ても内容は張飛の言ったとおりの高圧的で押しつけがましい内容で、玄徳へ届けるように手下の一人に手渡した。手下は自分も殴られたら(って張飛自身は小突いたつもりである。)たまらないと思い、あわてて使いに走っていく。 「これで、俺の軍隊は完成だ。完璧な計画だぜ。」 そう言いながら、張飛は前祝いと言わんばかりに酒を飲んでいる。 前祝い。と良いながら単に酒が飲みたいだけなのである。 玄徳はあいにく別の馬を届けに行ってこちらへ戻ってくる途中であり数日後になるらしい。 そうとはいえ逆に言えばあと数日後に、その玄徳という者に代わり自分が部隊の長になれると根拠もなく思っている。とは、いえああいう酔っぱらいに脅されれば誰もがびびるし、関わるぐらいならすべてを投げ出して逃げてしまった方が賢明と言える。 「それに劉備の野郎が拒否ったら、殺せばいいし。ぎっゃははっ」 一方の関羽は張飛ほど無計画な男ではないので、とりあえず相手の玄徳を調べようとした。いざとなれば文にも通じる関羽自身が(張飛のような意味ではなく)義をもって説得して自分の手下にしてしまえばとも思ったのである。 その為には相手の情報はあったことにこしたことはない。
2008年06月25日(Wed)▲ページの先頭へ
狂犬
目に見えたものを私は吠えた。
差し出された手を噛み、近付く人を威嚇し、 弱みを見せたものは傷付けて 私は生きてきた。 あの時の私は怯えていたのだ。 私を害する手も、優しくする手も みんな怖かった。みんな信じられなかった。 優しく見える手にどんなナイフが隠されているのか 傷が癒えても、記憶から血が出て 今度は心まで切り裂かれそうで 私は怖かった。 それから知らなかった。 本当の優しさを あの時の私は何もわからなく 吠えるだけの野犬だった。 |
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