カスタネットガール 下編 |
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2008年06月01日(Sun)
カスタネットガール 下編
「おい、起きろよ」
「えっ。」 どうやら心地よい機械の音を聞きながら夏見は眠っていたらしく、そこを工場主の息子に起こされたのだ。 「まったく、働けよな。ろくでもないカスタネットなんかやっているから仕事が中途半端なんだよお前は。」 そう言うと彼は真っ赤な髪の毛をなびかせながら、小馬鹿にしたようなニヒルな笑い顔を見せ、人の頭をこずく。 (そんな事を言ったってそう言うお前は、父親の手伝いもせずにぷー太郎しているだけじゃんか) そう言って文句を言いたかったが、雇われの身でそんなことを言ったら不味いので睨み付けるだけで黙る。 その顔が気に入らなかったのか、 「オヤジはしがないプレス工で単調な仕事を毎日やって、お前もカスタネット楽器をやってつまらなくないか。 その点俺なんか、ロックでバンド組んでメジャーを目指して頑張っているのに、本当に人生なのが楽しいのか」 そんな事を吐き捨てるとエレキギターを背中にしょって2階の倉庫に駆け上がる。 すると少したって今風の音楽が流れ始める、確かにメジャーを目指すと言うだけあって息子の演奏は悪くはない。 (あっ、でもリズムが一つずれた。) それがあの大言の後だとおかしくてたまらない。 大体父親がどうこう言っても、その父親が育てているから好き勝手に音楽を出来ることをすっかり忘れているところがアホっぽくて笑える。 (こういう音に人柄がにじみ出る物なんだ) カスタネットってバカにするかも知れないけれど、ひとつ一つの音にどうしても生き方とか、思いとか、そう言う物が出る。 彼女にとって見れば、息子の音楽よりも父親の機械の音の方が聞いていて心地よく好きだと思う。なによりあの音には父親の息子に対する愛情や、自分の仕事に対する愛情とかが溢れている。 工場主の人柄があの音に溢れている。 だからその音を聞いているだけで安心感とか安らぎを夏見は感じる。 「ロックだよな。」 その心地よい音色を思い出しながら、騒音の中、また音楽のことを考えながら夢を見る。 おわり
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