サクラ・チル



2008年03月31日(Mon)
サクラ・チル
サクラ・チル

今年のさくらが散っていく。
私はカメラにそれを納める。
紅に見えたそれは、モニターで確認すると、
一つの命が終わったかのように
死のようにとても白い物に写る。

「今年も来たのね。」
彼女は私に問い掛ける。
ふと思い出す。
最後に見た彼女の微笑みは、いつだろうって

あの時彼女の唇は、頬はまるで桜のように淡かった。
でも、あの後の彼女の顔は、この散る花びらのように白かった。

貴方の美しさは・・・貴方の淡さは
貴方の血が、貴方の情熱の紅が彩った物なんだな。
私は、その花びらを見て思う。
そして、永遠にその美しさが続くように
その花が咲き続けるように、私は願い思う。
(そして・・・この幻さえも・・・)

「桜は、内面に秘め続けた赤い情熱を刹那の中に咲さかせるの」
そう言っていた彼女、
彼女という桜はその名の通り、一瞬の美しさを咲かせて
短い命を散らせ、私だけが残される。

永遠に咲く桜がないように、
彼女の幻も、花びらと共に舞い消えていく。
私はそれに手を延ばし、一歩宙へ歩こうとする。
「だめ」

そんな声がする。
「貴方は桜ではないから。貴方は貴方だけでしかないから」
「君の許へイケナイなら、ずっと思っていてはダメですか。」
私は叫ぶ。風の音がそれをかき消す。

彼女の声がどんどん遠くになっていく・・・
「ダメよ。私は貴方の悲しい顔を見たくないから。
私は散るのよ。」

そして、最後の言葉・・・
「でもまた私は来年咲くよ、たとえ花を散らせても
寒い冬を越えて・・・
この想いを淡い紅色にして、貴方の為に咲くよ。」

そうして、今年の桜も散り、
一枚の花びらと共に、約束だけが私の手に残った。



writebacks(0)
トラックバック(trackback)
URL:

コメント(comment)
名前(*):
URL/Email: (optional)
タイトル(*):
コメント内容(*):
画像認証(*): 表示された画像の文字を入力してください:

名前と URL/Email をcookieで保存

携帯して持ち歩けるほど……
貴方の手に包めるほど、小さな小説のサイト


新着トラックバック/コメント

※このサイトの物語はフィクションです。登場人物・団体など一切似ていても架空の物です。このサイトの著作権は上賀茂 詩織に属します。一部または全部の無断転載等禁止です。

カレンダ
2008年3月
           
31          

アーカイブ
2008年 (210)
3月 (18)
4月 (31)
5月 (28)
6月 (31)
7月 (32)
8月 (33)
9月 (31)
10月 (6)

アクセスカウンタ
今日:30
昨日:280
累計:32,077